読書

『コロナの時代の僕ら』(パオロ・ジョルダーノ)

それはいわばリズムの止まった時間だ。歌で時々あるが、ドラムの音が消え、音楽が膨らむような感じのする、あの間に似ている。学校は閉鎖され、空を行く飛行機はわずかで、博物館の廊下では見学者のまばらな足音が妙に大きく響き、どこに行ってもいつもより…

『燃えよ左腕 江夏豊という人生』(江夏豊)

本革のボールがバットと衝突すると、カチーンと音がして、どこまでも飛んでいく。打たれても気持ちよかった。そしてピシーッとキャッチャーミットに収まったときの快感。 怖い顔してるし服役した過去もある。 しかし読み進めるとこの人、実に素直な人なんだ…

『一発屋芸人列伝』(山田ルイ53世)

髭男爵の「ルネッサ〜ンス」山田ルイ53世が、自らと立場を同じくする一発屋芸人の現在について描いた本。 登場するのはレイザーラモンHG、コウメ太夫、テツandトモ、ジョイマン、ムーディ勝山、天津木村、波田陽区、ハローケイスケ、とにかく明るい安村、キ…

『狂人日記』(色川武大)

幻視や幻聴に悩まされ、自らを「狂人」と定義した主人公の目線で描かれた小説。 狂人であっても人である限りそこに生活があるのは当然、とばかりに場面は切り替われど噛み合わない対人のやりとりが延々と続いていく。 もっとも色川武大がこの『狂人日記』を…

『笑われる勇気』(蛭子能収)

「今回、『人生相談』本の第二弾を出すということを出版社の担当者から聞いたとき、『どうせ売れませんよ』と言いました」 「オレは、自分の葬式で笑われても文句を言いません。というか、死んでるから言えません」 「姉の旦那は元警察官で、ずいぶん頭が固…

『ライオンズ、1958』(平岡陽明)

ここでいうライオンズは埼玉西武ライオンズではなくて、西鉄ライオンズだ。 福岡県福岡市に本拠地を置いていた頃の話。 1958年はそんな西鉄ライオンズの黄金期。 野武士軍団と呼ばれていた、荒々しくて危なっかしい選手たち。 そういう存在としてのプロ野球…

『競馬場で逢おう』(寺山修司)

寺山修司の競馬六部作。 しかし本人には六部作を書いた、という自覚はなかっただろう。 内容は報知新聞に連載していた競馬予想コラム「みどころ」「風の吹くまゞ」を時系列で並べたもの。 「菊の花は黄色い。黄色は五ワクである。だが、タニノムーティエが五…

おとぼけ課長の最終回

植田まさしと聞けば『かりあげクン』か、『コボちゃん』か、はたまた『フリテンくん』か、それとも高知競馬の騎手か… というところで、実はバリバリ連載中だった『おとぼけ課長』がまんがタイム6月号で最終回を迎えていた。 連載期間はなんとまあ36年間! 最…

『勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧幻の三連覇』(中村計)

「香田の機嫌の良し悪しはわかりやすかった。機嫌が悪いと、目が細くなり、耳まで赤らむ。選手とあいさつを交わすときのナンバーワンのポーズの位置も低く、どこかおざなりになる」 「(香田)監督は、高いから買えない、じゃなくてまず買っちゃうんですよ。…

『成駿伝 孤独の◎は永遠に』(「成駿伝」製作委員会)

「ダービーは、皐月賞で一番いい脚を使った馬を買え」 『1馬』でバリバリ活躍していた頃を俺は知らない。 清水成駿といえば東スポの馬單三國志で、G1の季節の土曜夕刊の一面が指定席のイメージ。 東スポでの連載を開始したのは2002年のことだったという。 俺…

『壇蜜日記2』(壇蜜)

「その男の出身地から察するに寂しがりなのだろう」 「死なないのは偶然だった。母も私も大事な者が死んで居残りのように生きている時期があったじゃないか」 「ここまで子供が苦手な理由は自分が子供だった頃に他の子供とウマが合わず、相手にされなかった…

『サラブレッドと暮らしています』(田村正一)

「別に忘れる必要はないけど、たまに思い出して笑ったり後悔したりするくらいがちょうどええんちゃうか?」 園田競馬の現役厩務員さんが著者のエッセイコミック。 並外れて発情する馬、やたら発情させる若き栗毛馬、男社会を和ませる女性厩務員、すぐ涙ぐむ…

『壇蜜日記』(壇蜜)

「まだ駆け出しの時でも、丁寧に扱ってもらったことはずっと忘れない。ぞんざいに扱われたことも絶対に忘れないが」 「そしてその後、小金持ち男に依存し土下座しながら贅沢出来る環境にしがみついていた暗黒の27歳を過ごした身分で…」 「少しばかり疲れてい…

『沖縄を変えた男 栽弘義 高校野球に捧げた生涯』(松永多佳倫)

アラフォーの俺が小学生の頃だから、相当昔の話だ。 沖縄水産は、甲子園での優勝候補の一角だった。 強豪校の中の一校だった。 優勝は叶わなかったが、2年連続夏の甲子園で準優勝もしている。 何も知らなかった俺は、「沖縄は南にあるし雪も降らないし年中暖…

『ジョッキー』(松樹剛史)

先々週の中京競馬でいい馬券を取って、先週の俺は盛岡競馬場に行った。 競馬から競馬へ。 盛岡駅のさわや書店でこの本を買って、帰りの新幹線で読んだ。 競馬の金で競馬に行って、競馬の本を読みながら帰る。 まったくもって、競馬が好きでたまらないのだ。 …

『ヘタウマな愛』(蛭子能収)

「30年間、いつも俺を支えてくれていた手だ。苦労も、喜びも、一緒に感じてきた手だ。だけど、その手はもう、俺の手を握り返してはくれない。次から次へと涙があふれた。(人間って、こんなにも涙が出るものなんだ)」 「運転しながらも泣けて、泣けて、涙で…

『馬道ひとすじ』(川島正行 2002)

笹塚の古本屋で見つけた。 税込の108円、即買い。 川島正行という人は、元船橋競馬の調教師で、何度もリーディングを獲っていて、アジュディミツオーで海外遠征もしていて、息子の川島正太郎は現役の騎手で「坊ちゃん」とあだ名されていて… というあたりは、…