髭男爵の「ルネッサ〜ンス」山田ルイ53世が、自らと立場を同じくする一発屋芸人の現在について描いた本。
登場するのはレイザーラモンHG、コウメ太夫、テツandトモ、ジョイマン、ムーディ勝山、天津木村、波田陽区、ハローケイスケ、とにかく明るい安村、キンタロー。、そして最終章は髭男爵について。
ああ、と頷きたくなるメンバーだが、顔と声が浮かんでくるメンバーでもある。
一発屋と一括りにされるが、1.5発屋もいれば0.8発屋もいると解説されている箇所もある。
しかし皆、一度は山を当てたことに変わりはない。
レイザーラモンHGの章に書かれている話。
「大阪における新宿2丁目的な場所に通って、色々とお話を聞いたりとか。時間もあったので、ニューハーフパブでボーイとして働くことにした。そしたら『ショーに出てくれ!』となって、マッチョな男性と女性のショータイムに出してもらった。まぁ全員男性ですけど」
偏執的なまでの飽くなき努力。
「自分は、本当のゲイではないから」
2000年の初頭に着想を得て、そこから5年掛けてハードゲイのキャラを作り上げていく長い道のり。
報われなければ、何も残らない。
この本を読んでいて、この人たちがやってきたのは就職氷河期の公務員試験だなと思った。
積み重ねてきた努力の山も、ほじくり返せば潰しがきかない夢の遺跡にしかならないから、諦めて後ろを向いた瞬間に全てが無になってしまう。
そんな世界で絶望し、壊れて、消えていった者たちもたくさんいるはず。
1発だろうが1.5発だろうが0.8発だろうが、当てた時点で勝利者には違いない。
ただそれは「芸人としての…」であって、「人生の…」にならないところが彼らの苦しみなんだろうけれど。
お笑い芸人にとって、不幸は飯の種。とりわけ、一発屋芸人の場合、“自虐”は定番のネタである。
「一時は稼ぎましたけど、今は月収◯◯円なんですー!」
「暇で毎日家にいますー!」
悲惨な体験をリサイクルし、笑いに変える、夢の再生エネルギー。これらはしかし、一時的に話題を集めはするが、最終的には損をする場合が多い。
もう文中で「最終的には」って言っちゃってるんだよね。
何人もの一発屋芸人について描きつつ、少なくともここに出てきた人たちについては再ブレイクはないというのが山田ルイ53世さんの見当なんだろうな…