切りつけるか、切りつけられるか

東京都八王子市の東京都立大キャンパスで昨年11月、同大教授の宮台真司さん(63)が刃物で切りつけられた事件で、警視庁は1日、容疑者とみられる相模原市南区の無職の男(41)が昨年12月に自宅近くで自殺していたと発表した。警視庁は容疑が固まり次第、容疑者死亡のまま殺人未遂容疑で書類送検する方針。

讀賣新聞オンライン)

これは怖かった、というより今でも怖い。

結局のところこの無職の男(41)がどうして切りつけたのか、その理由がまったくわからないままで終わってしまったから。

 

うちはメディアに向かって発信力高めの教員はいないと思っているけれど、恨み辛みで物事が動く世界なだけに、誰がなにをされてもおかしくない雰囲気はある。

そして「なにをされてもおかしくない」ということは「なにかをする」人間がいるということだ。

それが今回の無職の男(41)だったけれど、果たして彼だけの意思でこうなったのかは、もうわからなくなってしまった。

 

常識、倫理、良心。

そういうものを越えて、狂ってしまえばすぐに切りつける側にまわってしまう。

今の俺だって、切りつけられる側だと言うと「そんな価値あるの?」と笑われてしまうから、きっと切りつける側なんだろうな。

 

以上

1月が終わる

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ラゾーナ川崎のルーファ広場。

おととしの夏、鶴見で働いていた時に、南武線京浜東北線を乗り継ぐ合間にノロノロしながらウロウロしていた、思い出したくない思い出の場所だ。

 

あの時の俺の前任者は今でも病気のままで生きていて、前々任者は病気で死んだことになっている。

俺は繋ぎの期間の勤務を終えて元の職場に戻ったけれど、まともに帰ってくるとは思われていなかったので、「ポストがない」と言われて今でもそれを引きずっている。

ずっと苦しい思いばかりして、あれは一体なんだったのだろう。

たまには俺だって傷ついたと声を上げたかった。

泣きたかった。

大事にしてほしかった。

だからせめて、ここから先は放っておいてほしい。

誰も俺に近づかないでほしい。

一人で死なせてほしい。

死体になっても、風化しても、骨だけになっても、誰にも触れないでほしい。

俺にはもう、お前ら一人一人に呪詛を残す頭すら残っていないんだよ。

(府中白糸台日記「緊急事態宣言が続けばよかったのに」より)

絶対に忘れない。

俺はお前らに必ず復讐してやるからな。

 

以上

東京競馬場で逢おう 根岸S 2023

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単勝1・6倍の圧倒的支持に応え、これで10戦7勝。会心のレースを披露した鞍上の戸崎は「乗りやすい馬。どういうレースでも対応できる。パワー、スピード…全てが申し分ない。大きいところを狙える」と称賛。田中博師は「ジョッキーが慌てず乗って、よくしのいでくれた。時計を詰めているし、5歳にしてまだ成長を感じる。まだ前がかりの重心で、それが出遅れにつながっている。バランスのいい馬体になればもっと強くなる」と伸びしろに期待した。

スポニチアネックス)

パドックで見ても、レモンホップの馬体は抜けて立派だった。

これまでのレースを見ても、このレースを見ても、やっぱり1400mまでの馬という印象は変わらないけれど、だったらこの1400mの根岸Sでは素直に頭固定で買うべきだった。

軸にしていたのは追い込んで2着だったギルテッドミラー。

直線で前が詰まって、平行移動で外に出して、追い込んで届かずの競馬はこっちのほうが本番のフェブラリーS向きには見えた。

けど、ツキのない馬には賭ける気がしないのよなあ、最近は特に。

ツキがないのは罪になってしまうのよ、この世界では。
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「たまには俺の言うとおりに走れや」

そんな思いでお馬さんの駆けっこを眺めていた日曜日。

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「お願いです、一度でいいから私の買ったこの馬券の、数字の通りに走ってもらえませんか?」

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入場券がほしければ事前にネットで申し込んでください。

当選の通知が来たら支払手続きをしてください。

当日は入口でQRコードと身分証を提示してください。

手はもちろん消毒してください。

手首に入場証のリストバンドをはめてください。

8人のスタッフの前で検温してください。

そうしたら、競馬場へようこそ。

(府中白糸台日記「東京競馬場で逢おう アルゼンチン共和国杯)より

今日は事前にネット購入しておいた、200円の入場券のQRコードを機械にあてて、「ピンポーン」と大きな音をたてるだけで入場できた。

ほんと、よく競馬は休まず開催を続けてこられたもんだ。

ずっと競馬を観てきた者にとっての、ひそかな誇り。

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競馬が好きだけど、たぶん同じくらい、競馬場が好き。

だから府中に家を買ったんだ。

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で、競馬帰りはそのまま府中の旭湯でサウナを。

真っ黄色のタオルを渡してもらいながら「ああ、今日は5枠の馬を買うべきだったか」と後悔の替え玉をしそうになったけれど、帰って結果を見直してみれば、別に5枠の馬を買っていたところで俺の財布は厚くなっていなかったと思われる。

むしろ桜湯の8枠のほうでゲン担ぎをしておけばなんとかなったらしい。

 

以上

若手のままで衰える

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昨日の、確か夜と朝の境目くらいに起きたんだ。

それから34時間くらいずっと、起きているんだか生きているんだかわからない時間が続いている。

まあ、こきつかわれてるよね。

労働の場でも研究の場でも、どこへ行っても「永遠の若手」扱い。

俺の生まれた1979年の新生児の出生数は164万人だった。

コロナのせいで若干は参考記録の感もあるけれど、集計中の去年の出生数は80万人を割る見込みだという。

俺たちは本来、層が厚い層のはずなんだがなあ。

氷河期に殺されてしまってろくに生き残っていない。

俺の今の状況も、果たして生き残っているといえるのか?

きっとこのまま偉くもなれずに、若手のままで歳をとって、若手のままで衰えて、若手のままで死んでいく。

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今の相模浴場は同時のサウナ利用客を4人に制限中。

俺は5人目だったので、受付の前でしばらく待つかと思っていたら、「先にお風呂入りますか?」と中に入れてくれた。

ジェットの効いた寝湯にふんぞり返って入っていると、お姉さんが「お待たせしました」と貸し出し用のサウナマットとリストバンドを直接持ってきてくれた。

なんだか偉そうにしてしまって、申し訳ありませんでした。

 

以上

『月刊サウナ』で連載はじめます

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岩手からやってくる人が、俺に会いたいのだという。普段から「一人がいい」「しゃべらない日は疲れない」「トマトが嫌い」「ピーマンも嫌い」とバリアを張って生きている俺に、わざわざ会いたいのだというのだから、事態は深刻だ。訊けば連載開始のお祝いをという話だった。ありがたいのだけど、正直、その人の正体は男なのか女なのかもわからない。こういう時はいったいどうしたらいいんだろう。ネットで知り合った人とは実際に会わないという一般常識を守っていけば、大過なく日々を送ることはできる。しかし俺にはその人の書いた文章を読んだことがあった。良いものは良い、楽しいものは楽しい、嬉しいものは嬉しい。そうはっきりと書ける人だった。せっかくだから会ってみたいと思った。それにきっと俺と会っても話が弾まないとわかれば、向こうから先に消えてくれるだろう。書いたものを読む限り、そんな気風の人なのだ。俺は本来文章には上手いも下手もなくて、その人柄が出るだけだと思っている。だからおそらくそんなに悪いことは起こらないのではないか。なにかの勧誘だったら駒込のロスコよりも大塚のルノアールに呼び出されるはずだ。そう思って一般的には並びが悪いとされている日付と曜日がそろった日に、ロスコへ行った。4階の食堂でその人と会った。ロスコ名物の、あのお姉さんもいた。結構な長い時間、座布団に乗っかっていたのに、俺は最初の「生、中ジョッキで」しかオーダーしなかった。なんにも言わなくても、あのお姉さんが「またチキンソテー定食のおろしぽん酢やろ」とせっかちに端末へ入力してくれたからだ。ああ、ここはロスコのお姉さんではなく岩手からの客人の話だった。とにかくサウナが好きな人だった。俺を訪ねてくるくらいだから当たり前ではあるのだが「ケンカが強い人たちの中でもさらに強い人」くらいの強度がある人だった。隣のテーブルから草加健康センターの話が聞こえてくると、俺たちは対抗するように高砂湯(高知)とながまち梅の湯(岩手)の話をしていた。本来、ここで対抗する必要などひとつもない。そんなのはわかっているけど、必要のないことをするのは楽しいのだから仕方がない。「ながまち」という名前で仙台にあるのかと思ったら、盛岡にあるのだという。盛岡はかつてのバスセンターだった頃以来行ったことがない。が、こうして話を聞いてしまえば、仙台より170キロ先まで足を運びたくなってしまう。この数日後「最強寒波」で盛岡には大雪が降ったが、ながまち梅の湯はいつものように営業しているようだった。当然だ。気候もながまち梅の湯も、地元の人たちにとっては生活そのものなのだから。東京からどこかへ向かう時は「季節のいい時期に」の発想になりがちだ。物価の上昇、「お前らのためだ」と言わんばかりの工夫のない増税、そもそも上がらない給料。どうせお金を使って行くなら快適な時期を狙うのは自然だろう。しかしどんな季節でもそこには人がいるよ、サウナもあるよ、凍るような日でも水風呂は気持ちがいいよ。やっぱり表現がうまい人、そして自分が好きなものを素直に好きと言える人は、いつの間にかこちらを「〇〇したい」の気持ちにさせてくれるものなのだ。だから俺は岩手に行きたくなった。まったく、勝てるもんじゃなかった。岩手からやってきた怪物は2日後もまたロスコに泊まり、あのお姉さんから名前で呼んでもらって、たいそう喜んでいたらしい。

 

『月刊サウナ』で連載はじめます。

以上