国分寺の桃の湯の看板には「サウナ」の文字が残ってはいるのだが、今は「湿式サウナ風呂」のプレートがかかったスチームサウナの遺構があるだけ。
入浴料520円、風呂に特化した銭湯である。
しかし俺はおそらく、この「湿式サウナ風呂」に入ったことがある。
就職活動で山梨から東京までちょくちょく出てきていた頃、それは人生がまだ半分だった頃。
試験の帰りに中央線の駅を気まぐれで降りて、商店街を歩いて、その街の銭湯に入る。
つまらない世の中に出るための、つまらない就活中の気分転換だった。
記録をとっていないので定かではないのだが、おそらくその時には20年前の武蔵境駅を降りて、20年前の境南浴場も訪れていたはずだ。
そして国分寺駅から近いこの桃の湯にもやってきていて、「湿式サウナ風呂」にも入っていた。
今日硬くなったドアと壁の隙間から覗けたサウナ室の(脱衣所からは覗かなくても見えるけど)、レンガと尖った石で造られた小さな部屋の風景に見覚えがあったから、こちらの記憶には確信がある。
ジェットの強さでかろうじて差がつけられている、入ってみると意外に深さのある3つの浴槽の、おそらく1つはかつての水風呂だったのではないか。
あの時は今は間引かれている照明にも灯が入っていて、もっと明るい店内だったような気もするけれど、そこに関しては自信がない。
やってくる4月1日はあれから何回目なんだろう。
就職氷河期に散々な目に遭いながらなんとか就職したくせに、いいことなんか何もなくて、今も働くのは嫌なまま。
きっとずっと、このまんまで終わるんだろうね。
つまんねえの。
以上