渋谷区ふれあい植物センターは、10月5日から21時までの夜間営業を始めた。
ここは渋谷らしくない空間だ。
渋谷らしさをあんまり知らんけど。
群馬出身!群馬出身!群馬出身!というとバカにされがちで、そこはそれでもいいと思いながら生きてきたんだけど、館林からは素晴らしい東武電車が貫いてくれているもんだから、俺は案外と早いうちから東京をふらふらしながら生きてきたんだぜ。
そしてその割に仕上がりがイモなのは認める。
しかし本当にみっともないくらい、植物の名前を知らない。
チューリップ、ひまわり、あさがお、人前で「これだ!」と断言できるのはこれくらいで、これくらいなら断言されなくてもたいていの人はわかるので、意味がない。
あと俺は道路の名前もよく知らないんだよな。
ずっと野球を見てきたくせに、選手の背番号をあまり覚えていないことに気づいたのはいつだったろう。
おそらくそのあたりに自分の記憶のシステムの欠陥がある。
だが、そんなものはいまさらだ。
悔しくないし残念でもない。
もう決着はついているからだ。
上の子はもう、間違いなく俺よりも植物に詳しい。
父親の欠陥が引き継がれなかったことにほっとする。
父親なんか、子どもに追い抜かれてなんぼだよ。
ちょっと早すぎる気はするけど。
世界は残酷だから美しいんだって。
俺は終始、残酷を演出するための捨て駒として利用されて、そろそろ消えていくらしい。
あんまり期待されてもな、というところもある。
この渋谷区ふれあい植物センターは本当に小さい。
食事をするか、図書コーナーでなにか読むか。
瞬間の気分転換以外が目的ならば工夫して時間を過ごす必要はある。
でもね、仕事の後に広々とした植物園に来たって荒野にしか見えないのだから、このくらいのサイズでいいんだよ。
植物センターから、すぐ近くの改良湯へ。
「どうせ混んでるんだろ」と勝手に不貞腐れながら向かったのに、待ち時間なくすんなり入れて頭を下げたい気持ちになった。
以上