仕事から逃げたい、家庭から逃げたい、日常から逃げたい、自分自身から逃げ出したい。
逃げることもまた、欲求の一要素であることは間違いない。(サウナイキタイアドベントカレンダー2021『逃亡者はサウナを目指す』より)
心身をリフレッシュするための「転地効果」とやらを期待するには、自宅から100キロ以上離れた距離が理想らしい。
今日やってきたのは相模原市緑区にある藤野やまなみ温泉。
中央本線で高尾、相模湖、そのひとつ先がもう藤野。
明らかに府中から100キロも離れていないけれど、これだけ山の中まで来れば、まあ。
それはもうコロナ禍の影響だったに違いないが、この藤野やまなみ温泉は、しばらくサウナを閉鎖していた。
親切な人が「先月サウナ再開したらしいよ」と教えてくれて、来てみたら6月から休館するお知らせが貼られていた。
閉館ではなく改装工事とのことなので、これもまた、まあ。
ドライサウナの森の湯と、ウェットサウナの湖の湯を、男湯と女湯で毎週木曜に入れ替える形式。
今日入ったのは湖の湯だった。
サウナは改装されないのだろうか。
でも張り切って改装してくれると、きっとフィンランドサウナになっちゃうんだろうな。
半円形の岩水風呂が素晴らしかった。
山奥の温泉施設の水風呂と聞いて、イメージする通りの引き締まった冷えと爽快感があった。
痺れる一歩手前だったから、自分のセンサーでは14.5℃。
温泉もよかった。
ぬるくてよかった。
俺は江戸っ子なら怒り出すような、ぬるい温泉に長く浸かるのが好きなのだ。
山梨に住んでいた頃は下部温泉と、竜王にある山口温泉が好きだった。
さっきも言ったようにそんなに遠い場所ではないので、八王子あたりでグレた気分になったら、ここに来てしまえばいい。
駅前にはフリーwifiだってある。
それから、今日はコロナの話はしません。
日連大橋は立派な橋で、幅のある歩道もあるけれど、それでも歩いて渡ると怖かった。
途中で気持ちががおかしくなって、相模川に飛び込んでしまったら、みっともないと思った。
今日は別に「帰る価値があるほどの現実が待っているわけでもないし」なんて思わなかったな。
やはり高尾から2駅では、転地効果は出ないのだろう。
なんだって産み出される時は偶然の産物。
失われる時だけが人間の意志。
ここはかつての藤野町でした。
藤野やまなみ温泉には、手を消毒するための機械がそこかしこに置かれていて、食堂にはアクリル板がずらっと並んでいて、空気清浄機は俺が前を通るたびに「空気の汚れを発見しました」と元気そうだった。