店の奥ではお父さんが俺のホットケーキを焼いてくれている。
お母さんは何やら窓の向こうを見ながらニコニコしている。
視線を向けると、学校帰りの子どもたちが、店内のお母さんに向かって手を振っている。
お母さんも手を振りかえし、そのままのニコニコで俺のところまでアイスカフェラテを運んできてくれた。
「すぐホットケーキも出来るから、お待ちくださいね」
の言葉にもちろん嘘はなく、ほどなくやってきた分厚いホットケーキを、俺はピノキオに覗かれながら食った。
先週、去年の勤務日数の記録を見てうんざりした。
利益と責任総取りの一人親方でもないのに、悲惨な数字が残されていた。
だいたいいつも働いていて、そのくせろくな仕事も出来上がっておらず、俺の昼間は毎日酷いものだった。
ホットケーキとアイスカフェラテ、合わせて1000円。
今日は板橋区大山金井町の喫茶店「ピノキオ」で、世の中にはこんなにやさしい昼間があるものなのかと思った。
90℃超のサウナ室はほぼ独り占めの状態だった。
青いタイルの水風呂で目一杯、手と短い足を伸ばしてくつろいだ。
満足して外に出たら、大雨が降っていた。