月見湯と阪急電車

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朝まで論文と戦って、気絶して、起きても朝。

肩が痛い、首が痛い、背中が痛い、ふくらはぎも凝っている。

寝続けるのにも耐えられない体になってしまった。

外に出たらこれが白内障かと思うくらい眩しかった。

マッサージ屋はどこもいっぱいでどうにもならなくて、痛いまんまのカラダですごすごと家に戻った。

中年として順調に弱っているのに、これが残りの人生で一番若い日なのだから手の打ちようがない。

家でうとうとはしたけれどそれほどは眠れず、夕方になってまた外に出た。

朝よりは体が痛くなかったので、下高井戸の月見湯へ行った。

相変わらず錆びた色の水風呂と、ワックスが塗られて阪急電車のようにテカテカになった脱衣所の床と。

思えば藤沢の富士見湯のサウナ室でもそうだった、俺にはテカテカしたものを阪急電車に例える癖がある。

金曜の夜に仕込んでいたMHKマイルカップの馬券が的中していたのは月見湯の帰りに寄ったカレー屋で知った。

三連単80倍そこそこの配当は、自分のように小さい男だからこその守備範囲であるといえる。

明日、子どもたちが帰ってきたら「パパの背中を踏んでくれ」と懇願しなければならないので、これでなにかその時の報酬を買っておくことにする。

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以上