「日本一の勝ち鞍を取ってみようかな」って、そういう気持ちになっていったんですね。大井のリーディングは獲ってたけど、南関ではずっと2位でしたから。そのためには年間300勝を超えないとだめなんです。40代半ばで、全国リーディングを獲りましたよ。
俺はもう、人の話なんか聞かないことに決めているの。
人生の選択なんて大抵はうまくなんかいかないんだから、最後は「自分で決めたんだから仕方がない」に諦めながら着地をすることが、命を繋ぐための唯一の思考だと思っているからだ。
でもね、この的場文男さんの、40歳を過ぎてから日本一の勝ち鞍を狙いにいって、46歳で全国リーディングを獲った話には勇気づけられた。
「一体なんのために」「いまさら無理だ」そう言われながら42歳で受けた院試は、「俺は的場文男なんだ」と自分を騙しながらなんとか乗り切ったんだから。
大井競馬場にやってきたのは2019年12月29日、オメガパフュームが勝った東京大賞典の日以来だった。
大井競馬場は前とあまり変わったようには見えなくて、これは前の記憶が薄れているだけかもしれないけれど、とにかく懐かしかった。
「トゥインクル」の文字が入ったハズレ馬券すら、懐かしくて、愛おしかった。
だから今日はずっと紙の馬券を買った。
コロナ禍の前の記憶が、やっと解凍されていく感覚があった。
競馬場で見えるのは、すべてが美しい光景なんだぜ。
そう見えないとしたら俺が手に持っているiPhone SEが悪い。
競馬場から無料のバスに乗って、大井町へ。
今日のサウナはすえひろ湯だった。
余計なものが何もないというか、もしかして必要なものまでないんじゃないかと思ってしまうくらい、のっぺらぼうのサウナは金春湯の流派ゆえだろう。
浴室にもサウナにも余裕があったのは、お盆の品川は人が来るより送り出す側だからで間違いない。
以上