夜の終盤戦になってからタイ古式マッサージを受けたりして、あまり眠らなかった神戸サウナ。
ここはさ、午前様でもロウリュしてくれるし、ずっと人の気配があるのがいい。
人の気配がある場所で、一人だけ放っておいてもらえる時間が一番気持ちがいい。
三ノ宮は「ノ」の字が入っているほうが、余裕があって格好がいい。
エルコンドルパサーの二ノ宮調教師の時もそんなことを思っていた。
しかし阪急と阪神が使っている駅「神戸三宮」まで圧縮されると、どうしてか爽快感がある。
幸せそうな人を眺めているのが好き。
そういう時の俺は特に嫉妬もしない。
ただしこれは美徳ではなく、精神の欠如です。
神戸三宮から奈良までは約2時間だった。
てっきり奈良健康ランドは奈良市にあると思い込んでいたが、そうではなかったのだ。
天理といえば天理教のハッピを来た人がたくさんいるイメージのままなのだが、いまはどうなのか。
奈良健康ランドの最寄り駅であるはずの二階堂は小駅で、そもそもあまり人影がなかった。
HPの中でも「住宅地の中にある、沿線では小さな駅です」と紹介されていて、もとより車で訪れる場所なのだろう。
細い道を歩く、歩く、歩く。
海外に行きたいと思い続けた何年かだったけど、身近にもほんのりとした異国感はある。
適当な先入観を持って外国に行くより、こっちのほうが有意義だったのかもしれない。
まあ、いまさら感性を鍛える年齢でもなくなってしまったけれど。
奈良健康ランドの本来の入館料は2200円らしい。
それが学割なら1320円になるというので、感性を鍛える年齢でもなくなった男には不似合いな学生証を財布から出そうとすると、語尾が上がるイントネーションで「ツイッターはされていますか?フォローはしていただいていますか?」と訊かれる。
奈良健康ランドをフォローしている画面を見せると、入館料は1000円になった。
遠赤外線サウナは、壁に備長炭が埋め込まれた造りになっていて、無臭だった。
露天には飲み物の自販機があった。
浴室のさらに奥には、有料サウナのゾーンがあった。
ロウリュウサウナ、クリスタルサウナ、薬草サウナ、岩盤浴にアクアストリーム、クールサウナ。
今なら理系の学部で、特に物理あたりを専攻しつつサウナを研究してくれている学生もいるのではないか。
学問を突き詰めようとすれば、環境と人間が揃っている場所にはかなわない。
それをわかっている人は、諦めないで渋チン文科省と戦うか、海外で幸せになるかの二択になっている。
日本式サウナが海外輸出される時代になってもおかしくないと、結構本気で思っている。
おふろの国に置かれているイメージが強くて、奈良で見かけた瞬間に驚いてしまった『月刊サウナ』。
買い占めてやろうか!
と思ったけれど、それでは奈良県民が困らせてしまうので、自重して1冊だけにしておいた。
「なにけん」じゃなくて「ならけん」で買った。
【奈良健康ランド】
大地は果てしなく、すべては美しく。
南海ホークスのホームラン王、門田博光は奈良の自宅から大阪球場まで通っていたという。
近鉄電車で学園前駅から往復していたという説、送迎リムジンから短パン姿で降りてきたという説。
そろそろ京セラドームに向かいますか。
そもそも俺は日本シリーズを観るために、仕事も研究も放りだして、妻に頭を下げて下げて下げて下げて下げて家を出たのだから、
「僕も逃げたくなることはたくさんありますけど、読書だったり、いまはYouTubeもありますし、人に話を聞いたり、いろんな情報を集めて、どうにかして壁を乗り越えられないか、という試行錯誤をしますね。毎日、いろんなことから逃げたい、と思うこともありますよ。でも、僕にはどうにかしてこのつらいことを乗り越えたら楽しいことがあるんだ、というマインドがあるので。それはモットーとして心において、つらいこと、嫌なことは乗り越えるようにしています。悪いことが起きたら、これはいいことの前兆なんだな、と思って、これを乗り越えたらいいことあるぞ、と思うようにしています」
(サンケイスポーツ)
つらいことを乗り越えたら楽しいことがある。
若さが眩しい。
田嶋はオリックスにとって大事な選手だもん。
きっとこれから楽しいことがたくさんあるよ。
俺はこの田嶋が先発だと思い込んでいたが、やってきたら山岡が投げていた。
そしてオリックスは勝った。
ようやく勝って、1勝2敗1分に。
関西はゆかりが薄い地域だからこそ、時間をかけて回りたい。
各府県を2日ずつでいいから、サウナに入りながら、野球観戦も日程に組み入れて、ゆるゆると回りたい。
そこまで難しい願望だとは思わないのだけれど、叶わない。
20年働いても叶わない。
30年働いてもきっと叶わない。
試合の後は大阪発0:33のサンライズに乗って、そのまま仕事に向かったのだった。
以上