そんな気がなくても、どうしてもこちらが上になってしまうのは仕方がない。
お世話になっている立場ではあるけれど、契約を結んでお金を払っている立場でもあるので。
うちの職場の清掃のおば…お姉さんたちは、いつも一生懸命働いてくれて、かつ腰が低い。
昼に行った回転寿司の、端っこのカウンター席で背中を丸くしていると、後ろから「あらー、どうもー」と声をかけられた。
今日の仕事を終え、いつもの作業着ではないおば…お姉さん。
お友だちと集まって、テーブル席で大ジョッキの乾杯をしていた。
俺は厳選した110円の皿だけを食べ終えると、とぼとぼと足音を残しながら、なんにもいいことのない午後の職場へ戻った。
今年もまた、ひとつ歳をとった9月が終わっていく。
気がつくとある日、私は十七歳だった。ある日二十五歳だった。ある日三十歳だった。
そして今日、気がつくと四十をひとつ過ぎていて、眉を描きながらため息をつくのが癖になっている。
きっといつか同じように、死の床に横たわる自分にふと気づくのだろうか。
(沼田まほかる『九月が永遠に続けば』より)