今夜、境南浴場のサウナ室は明るかった。
ここに来たのは4月の頭以来で、なんだか春の始めと終わりを、境南浴場を跨いでキセル乗車してしまった気分になった。
要するに、緊急事態宣言というやつは罪深い。
銭湯のサウナが続々と再開になって、緩々とだが世の中が前に進み出した気がしている。
そう、気分って大事。
しかしなあ、武蔵境の駅前にはこれまで見たことがないくらいタクシーが停まっていた。
連なって停まっていた。
もう誰も路上飲みで盛り上がっていないし、ギターを弾く者の姿も見えないし、キャバクラの客引きもたった一人。
俺が歩く音がトボ、トボと響いているだけ。
多摩の夜はすっかり早く、寂しくなってしまった。