優しさを捨てたことと『わたしたちの道徳』

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いつだって昔の自分はいい奴だったと思う。

あくまで今の自分との相対評価だから、社会の偏差値的な物差しで測れば、当時だって大していい奴ではなかったかもしれない。

だが今よりいい奴だったのは確かで、どんな感じでいい奴だったのかと訊かれたら、優しい男だったと答える。

優しさとは何か。

それは人を思いやれること、そのために想像力を惜しまず使えること。

誰に教わったわけでもないのにそう思っていたし、その思想は今でも間違ってはいないと思う。

 

優しさを捨てたのは20代の半ばだった。

決定的な瞬間は記憶していない。

が、「このままでは食い物にされたまま終わる」と思い、優しさを捨てたことは覚えている。

優しく生きるには強さが必要であることを理解し、自分には強さがないことを思い知らされ、そもそも優しくない奴のほうが快適に人生を楽しんでいた。

優しさを捨ててみたら俺の毎日も快適になって幸せで大満足で給料が上がって彼女までできちゃいました。

なんてことはなく、優しく生きてきたつもりの日々がまったく無駄だったことにうんざりした。

生まれてからの日々が、一日残らず無駄だったってのは虚しいよ。

他人から指摘されたら反発もできるが、自分で気づいてしまったものだから否定もできなかった。

 

そんな自分が今になって『わたしたちの道徳』なんて教科書を息子と一緒に読まされて、思いやりがどうだこうだなんて話をするのは詐欺だろ。

俺は詐欺師だろ。

手抜きの情報商材を高値で売ってる連中も俺も、やってることは詐欺なのだから何も変わらない。