音の無いモノレールで

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6時半には起きたのだが、ものすごく嫌な、今起き上がったら酷い殺され方をする予感があったので、もう一度寝た。

真相は眠かっただけなのかもしれないし、本当にこれで酷い殺され方を回避できたのかもしれない。

自分のことだから、自分ではわからない。

俺にとっての酷い殺され方とは、汚い手をした馬鹿に惨殺されることなので、真面目に起きていたらそうなっていたということにする。

起きてこない俺を呼ぶ妻の声が聞こえてきた気がしたが、構わず寝ていた。

二度寝のせいで1時間遅れで出勤した。

 

だからといってどうということはなく、いつもと同じく嫌な女の隣で仕事をしただけだった。

自己の能力を過信し、他人を見くびり、それでいて不安なので常に攻撃的。

よくいる量産型の嫌な奴だ。

しかしなぜか今日はよく笑っている。

周りもつられてよく笑っている。

俺はほどほどにこの女の相手をして、職場の秩序を保っているおかげで、我慢料とも言える実質より高い評価を手にしてきた。

狭い世界の相対評価に過ぎないが、金になるならそれでいい。

しかしこんなにニコニコと爽やかに仕事をされたら、俺の我慢料は消えてしまう。

困る。

 

これまでになく和やかな雰囲気の中で働いて、それでも定時になったら即座に退勤した。

外に出るとそこまで空気は冷たくなく、おそらく明日は雪の天気予報は外れるだろうと思った。

しかし俺の見解は何にせよ外れることが多いので、ならばきっと明日の多摩地区は大雪なのだろう。

ノムさんはあえて外れ馬券を買うことで厄を落として、野球にツキを残すように心掛けていたという。

俺はいくら外れ馬券を買っても、他でツキが回ってくる気配がないし、そもそも本厄の厄払いさえしていない。

 

素直に家に帰ったら酷い殺され方をする気がしたので、人気のない多摩センターで、味の無い喜多方ラーメンを食って、音の無いモノレールに乗った。

立川まで行って、サウナのために銭湯へ向かった。

ここではサウナ料金を払った客は、目印に黄色のバンドを手首に巻くことになるのだが、今日渡されたのは紫色だった。

小洒落た色に新調したものだと思いながら、親子連れもいる賑やかな中で、一人ポツンとサウナ→水風呂を繰り返した。

帰り道、キャバクラの客引きたちに、どうしてか俺だけは無視された。

 

さすがにちょっと様子を見にいこうかと一旦家に帰ってみたら、顔も身体も破壊された俺が寝ていた。