駅前からの歩いた感触で、この街の銭湯のサウナでは遠赤ストーブが唸りをあげていると決めつけていた。
入ってみたらセルフロウリュのできるフィンランドサウナだった。
たった1軒であっても、その銭湯が平日の14時から営業してくれているのだから、この街は豊かだと思った。
あ、でも、こんなのぼりもある。
この街にとって御所宝湯は観光資源でもあるんだろうな。
当たり前のことだけど、奈良県御所市(「ごせし」と読む)には人口2万人強の生活がある。
異邦人が風景をむやみに喜ぶことを、気に入らない人がいるのもわかる。
「寂れた街を見に来たのか」
「東京人が物見遊山か」
いやいや、中身は群馬県人なんですよというのは置いておいて。
そうじゃなくて、本当は人が減らずに、寂れなくて済んだ方策もあったはずなんですよ。
それは御所市だけじゃなくて、国家で取り組むべき内容だったんです。
「立米」の読み方がわからない。
みんな賢くなって、「実際には起こらなかった歴史の話」が相手にされなくなっちゃった。
この国から人が消えていかない歴史が実現していたら、俺にも友だちの一人くらいはできていたかもしれない。
奈良の名物、柿の葉寿司。
この柿の葉はむいて食べればいいのか、そのまま食べるのが本場の常識なのか。
答えは前者。
柿の葉を巻いているのはあくまで保存のための知恵だから。
……だよね?
都合のいい縮小均衡なんてありえない。
むやみにまとめたターミナルにしないのが関西の鉄道の在り方。
御所は大阪難波から近鉄電車を乗り継いで、1時間ちょいで到着する。
東京の都心から1時間では、こんなに思い出が現役で頑張っているような街にはたどり着かない。
これは関西の豊かさだと思う。
日本は全部、寂れていくよ。
でも御所には生き残ってほしい。
一度訪れた者からのエコひいき。
島村外科医院だけじゃない。
御所は病院の看板が妙に凝っている街だった。
ここまで来たら、みんなで長生きしようぜ。
人が生きてるうちは、街も生きてる。