京王線の新宿駅で、それは1638発の京王八王子行き特急の、後ろから2両目だった。
優先席に二人並んで座る60歳くらいの男どもが、大声を張り上げて喧嘩をしていた。
「足を組んで何が悪い。邪魔か?俺は金を払っている」
「金払えば何してもいいのか。だったら俺はここでションベンしてやんぞ」
「できるもんならやってみろ。女子供の前でやってみろ」
「そしたらお前はいくら払う?俺はお前の10倍は稼いでる。見てろ今から○○○出すから」
言い争っているのに並んで座っているのは滑稽だったが、そこは優先席で、明らかに酔っていたし、そうでなければ相当に高血圧な顔だった。
身動きはとれる程度だったが、乗客は多かった。
子連れのママたちは苦い顔をし、パパたちはチラチラと視線を送り、その他大勢は無関心だった。
俺は一旦乗った車両を降りて、ホームドアを見張っていた駅員に喧嘩だと告げて、念のために1両空けて4両目に乗った。
どうせなら、遅延して大概な賠償金を取られてしまえと思ったが、出発は定刻通りだった。
おおよそは駅員が近づいてきたところで、仲良く揃ってシラを切ったのだろう。
1月4日、だんだんと日常に戻ってきた感。
生活の苦しみは、そんな生活しか作れなかった自分への憎しみ。
うんざりする日常、死ぬまで一介の畜生。
明日からまた働く。
それでも周りが9連休だという中、7連休できたのは俺にしては上出来だった。