お盆休み、世間は9連休とか10連休とか。
帰省ラッシュだなんだと言いながら、みんな実に巧みに交通手段を確保して行きたいところ、行くべきところに向かうものだと思う。
俺のお盆休みは今日限りの1連休だから、これはもう桁違い。
特に守るべき墓もない立場なわけで、こうなるのは運命なのだろう。
世の中はそれなりにうまくできている。
俺の両親は墓はいらないと言っているのだが、俺は墓を造らずして弔う方法を知らない。
イメージすら湧かない。
面倒な思いをするくらいなら自分が先に……とも思う。
もうそれでいいよ。
何より全てに、面倒くさいは優先する。
年末の、クリスマスが過ぎてからの、東京からだんだん人が減っていく様子が好きなのだが、お盆休みはそこまででもない。
今日の新宿御苑に人気がないのは暑いから。
時折日陰に座り込んでいる外国人がいるくらいで、日本人は皆溶けてしまったらしい。
静か。
8月に入ってから馬券を買っていないし、プロ野球もほとんど気にしなくなっている。
休みの日になると急にどっと疲れが出て動く気がなくなって、今日の午前中もそれだった。
午後にはなんとか夏休みの思い出をひとつくらいは作りたくて外に出たわけだが、思考力と判断力がどうかしてしまっているから、一番日差しが強い時間に新宿御苑を歩くようなことになっている。
だいたい来月40歳になる男が夏休みの思い出ってなんだよ。
不惑とは惑わないことではなく、惑える余地がなくなることである。
不惑とは当人の意識の問題ではなく、社会的事象。
他責過ぎる?
許してくれよ、だって俺の老衰はもうスタートを切っている。
連休を、人生を、楽しむ人たちを見て羨ましいとは思うが、こちら側に落ちてこいとは決して思わない。
楽しむ人たちは目一杯楽しんで、幸せな思い出を作ってほしい。
そう思えるところだけが自分の美点で美徳だと思っている。
どこか神経が1本切れているだけかもしれないが。
左に行くと歌舞伎町AKスパ、右は水道橋のアスカ。
馬券は買っていなくても、サウナ室で競馬は観たいものだから右に進む。
東京ドームの巨人戦が始まったばかりの時間で、水道橋駅前は閑散としていた。
俺はアスカのポイントカードを作るたびに失くしてしまっていて、今日作ってもらったのがおそらく5回目ではなかったか。
サウナ室のテレビは競馬ではなく、序盤からよく打って大量リードの巨人戦が流れていた。