ただ相手の話を聞いて、ただ謝るような用件の出張を3件。
なんだこの仕事?
同行してくれたのは職場の新卒イケメン一番人気、昨日のダノンキングリーより鉄板な彼。
どうしてそんな彼が俺と、こんな仕事をしているのだろう。
「俺の時はさあ、氷河期だったしさあ、ろくな就職先もなくてさあ、結局転職したんだけどさあ、こんな感じでさあ……君ならもっといいとこ選べたんじゃないかって、思ってたんだけど」
「今からでは……どうでしょう?」
「……応援したほうがいい?黙って見てたほうがいい?」
「応援してください。控えめに」
しくじった先にも未来はあると素直に思える人間は若くて強い。
そして俺が精一杯で日銭月銭を稼いでいる手段が、彼にとってはしくじりでしかないと思うと魂が死ぬ。
いつだって変わらず、他人と顔を突き合わせて話すのは疲れることだ。
3件の謝罪を終えて、ダノンキングリーな彼は直帰。
俺はサウナに直帰。
周囲を見渡すと、サウナ好きはだんだんとカラカラ乾燥系へ好みが寄る傾向があるように見えるが、俺は相変わらずシトシト湿度系が好きだからまだまだサウナが足りないのだろう。
ヒルトップのサウナは好みのど真ん中。
大して冷たくする気のない水風呂も、自然と冷たくなる季節が来たのだからもうこれでいい。