府中の森公園に棲んでる猫が言ってた

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府中くらいがちょうどいいんだよって、府中の森公園に棲んでる猫が言ってた。

 

社会に出て3年くらい経った頃、北海道の千歳市から地方公務員採用試験の案内を取り寄せたことがあった。

振り返っても千歳市であったことにはなんの理由もなく、たまたまなにかで目に留まっただけとしか思えない。

当時すでに北海道の自治体に豊かなイメージはなかったけれど(夕張市が破綻したのはそれからまもなくだった)、千歳市は空港があるくらいだからまずまずではあるのだろうと、そのくらいの思考はあったかもしれない。

結局、試験は受けなかった。

筆記試験があって、その後に面接が2回。

まずは受験に行くための交通費の捻出が課題で、まだ妻ではなかった頃の妻に「私も(試験に)ついていく」と言い張られて、二人分はキツいということでやめてしまった。

きっと俺の姿が観光旅行に行くようにしか見えなかったのだろうし、その頃の俺ではそう見られても仕方がなかった。

それに試験を受けて、合格して、移住をしても、そんなに長くは続かなかったと思う。

見知らぬ土地で地域密着を強いられて生活するのはしんどいもので、若い俺にそれだけの胆力があったとは思えないからだ。

 

住むのは府中か調布かくらいの話でも、選択肢を持って生きられただけでもありがたく思って、やっぱり府中の森公園に棲んでる猫が言ってた。

 

以上