そもそも俺は今までどうしてサウナになんか入っていたんだろう

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つまらない本は最後まで読まなくなった。

つまらない映画は最後まで観なくなった。

映画館を途中で抜け出すのもあれなので、映画館で観るのはやめてしまった。

 

かつてはなんとかして金と時間と感情の元を取ってやろうとして、結果としてつまらないものにほど固執していた。

今はそうではなくなった。

それは自分が豊かになった証。

ではなくて、自分自身がよりつまらない人間になっただけのように思われる。

 

仕事帰り、いつものようにサウナに寄ってみたけれど、落ち着いて座る気分にもなれなくて、まともに汗をかく前に出てしまった。

だいたい、俺は今までどうしてサウナになんか入っていたんだろう。

昨日までの自分に訊いても納得できる答えは返ってこないだろうし、物事に納得する頭ももう売り切れてしまった。

 

こんな状態の生き物に「今は疲れているだけだ」と言ってくれる人は、俺のことを信じすぎだ。

もう東日本大震災の前の日本を思い出せないし、今はコロナ前の生活を思い出せないし、そもそも誰から生まれたのかすら思い出せない。

思い出せないというか、そんなものがあったかどうかにも自信がない。

 

どうせなんにも覚えていられないのに、まだ今日はあったし、たぶん明日もある。

うんざりしているばかりなのに、うんざりしている理由すらわからない。

もうとっくの昔から詰んでいたんだろう。

自分は完成された欠陥品で、成れの果てに間違いない。

 

以上