犯罪加害者にならないこと

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生まれ育ちから不可抗力で続く生き地獄があれば、観光用に赤く染めた血の池地獄もある。

地獄にも天と地の差があるのだよ。

だから「それぞれの地獄がある」という表現が嫌いだった。

それぞれとは言いながら、雑に、適当に、結局は「地獄」で一緒くたにしてまとめてくれるなよと。

しかし年末に、旅先で、柄だけで色の入っていない入れ墨の背中を指して、「母ちゃんの手術に金がかかるから、こっから進まないんだわ」と話してくれたサウナ紳士がいた。

訂正。

誰でも彼でも、天と地というほどまでには、地獄に差はないのかもしれない。

 

職場に行って、大学に行って。

とても「今年もよろしくお願いします」なんて気持ちになれない相手がたくさんいたわ。

誰だって犯罪の被害者にはなりたくないだろうけど、それは当たり前の願望。

これからは自分が加害者にならないことが目標の毎日になる。

人は簡単に狂ってしまうから。

あたしたち、もうすぐ天国へ行くんだから、あんたも今のうちにいい子になるようにしてよ。

トーベ・ヤンソンムーミン谷の夏まつり』より

あらためまして、あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

 

以上

焼きそば1パック600円の競馬場と尾張温泉東海センターと

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晴れた日は名古屋競馬場へ。

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去年の1月2日も俺は名古屋競馬場にいた。

それは名古屋駅からあおなみ線で向かった先の「土古」にある、年季の入った競馬場だった。

その後競馬場は移転して、今年の俺は近鉄蟹江駅から無料の送迎バスで、名古屋競馬場へやってきた。

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しかしさあ、やきそば1パック600円の競馬場での勝負はしんどかったよ。

人気サイドで決まっているように見えて、なかなか順番が合わない。

ボックスにして大きく囲うほどのオッズでもなく、そもそもそんなに点数を増やせるほどの資金もなく。

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競馬でやられた後は、尾張温泉東海センターへ。

HPの交通案内には近鉄蟹江駅からタクシーで7分と書かれていたが、俺は負けた人間らしく、30分をかけて蟹江の街を歩いた。

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入った瞬間に「高度経済成長!」と思った。

浴室内に目いっぱい広がった温泉、露天にも広がった温泉、ずらっと並んだカラン、湯気の向こうには正月らしく三世代のお客さん。

血は引き継がれていると思った。

これが少子高齢化が進む国の光景とは思えなかった。

こんなに賑やかで華やかな温泉施設なのに、サウナだけは細長くてテレビもない、取り残された空間になっていた。

 

尾張温泉東海センター】

http://owarionsen.co.jp/

以上

元日は休日救急歯科診療へ

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日曜日、休日、年末年始等、一般の歯科診療所が休診の時に、救急の患者さんを対象に応急処置を行っています。

高知市歯科医師会HPより)

やなせたかし風のイラストだが、ここは高知なので、これは本当にアンパンマンの作者が描いたイラストだ。

俺の2023年は、高知の歯医者で始まった。

 

晦日の夜、泊まっていた高知のドーミーインで歯磨きをしていて、右上の歯に心当たりのない欠けがあるのに気づいた。

俺は笑った。

本当に笑った。

年が明けてすぐに歯が欠けるより、すべてを今年に押し付けてしまえる時間に気づいたほうが、まだ気持ちは楽だと思ったのだ。

紅白歌合戦が終わってからゆく年くる年が始まるまでの、短い時間の出来事だった。

 

欠けた跡が頬に当たることもあって、元日の朝(まさに元旦!)からネットで調べた高知の休日救急歯科診療へ電話をした。

わざわざ東京に帰ってから歯医者に行くと、混雑に巻き込まれるだろうとの思いもあった。

電話のお姉さんはぶっきらぼうで、実際に受付で会うと親切な、よくあるパターンだった。

歯科医のおじさんは「欠けるときは中が虫歯になっていることが多いけど、今回は黒くなっていないから大丈夫でしょう」と、文字では表せない高知のイントネーションで言ってくれた。

欠けた部分を足してくれて、治療は5分もかからずに終わった。

 

旅先で歯が欠けたのは不運でも、こうしてすぐに手を打ってしまえば、むしろ気持ちのいい2023年のスタートになった。

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休日救急歯科診療をしてくれた「総合あんしんセンター」からすぐそこの清水湯に寄ってみた。

何年前だろう、以前来たときは大晦日で、高知の子どもたちとテレビの格闘技を見上げていた。

今日は元日限定の朝湯の日で小さなサウナは独り占め、風呂上がりはスマートな缶のバヤリースオレンジを飲んだ。

ぽかぽかと暖かい高知城の周りを散歩しながら、どうせだったら最初からこの土地に生まれてしまえばよかったのにと、自分に向けて思った。

 

【清水湯】

https://peraichi.com/landing_pages/view/shimizuyu

 

以上

いい顔の85歳になるために

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晦日高知競馬場にいた。メインは賞金2000万円の高知県知事賞だった。そこには去年まで大活躍し、今年になって落ち目になってしまったスペルマロンという馬が出走していた。高知競馬で活躍しても通常は種牡馬になる道はない(グランシュヴァリエは奇跡だ)。行き先がないがゆえに現役を引退できない悲哀、悲壮感。ところが今日の高知県知事賞でこの馬は好走した。直線はかつて船橋にいた林謙佑が乗っているガルボマンボと叩きあっての2着。俺にはスペルマロンが持っている力を絞り出したというより、特に最後の直線は遊んで走っているように見えた。そこには悲哀も悲壮感もなかった。なんというか、そんなものなのだ。物事なんて勝手に持ったイメージでいくらでも見誤ってしまう。今年は大学院に入ったのが俺にとっての大きな変化だった。過去を未来に繋げていくイメージばかりしていると、自分の居る場所がわからなくなってしまう。ここは過去なのかもしれないし、未来なのかもしれない。「今」の概念は曖昧すぎて受け入れられない。さっき紅白歌合戦で85歳の加山雄三が歌っていた。相応の衰えはあっても、いい声と顔をしていた。男は生き方というか、人間性が年月を経て顔に出る。女は知らない。俺が今の加山雄三の歳になるまではあと42年ある。そんなにあるなら、俺だっていい顔の85歳になろうとチャレンジする価値はあるかもしれない。なんにもまとまらないけど、俺はそろそろ寝る。好きで旅をしていても、働いている時ほどではないにしろ、疲れるのは変わらない。2023年も他人のために想像力を使える人間でありたい。あり続けたい。諦めないでずっと。少なくとも85歳になるまでは。

 

2022年 以上

池田温泉(徳島県三好市)

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これまでに見たことがなかった、アイボリーカラーに「タマゴシャンプー」の文字が入った洗面器。

ハードロックなラジオが流れる、脱衣所にあるサウナ。

斜に構えて立っているサウナストーブ。

水風呂は浴室の一番奥。

浴室の壁にはマンボー、エイ、筋トレをするゾウなどポップなイラスト。

彫り物入りのお父さんに引率された3人の子どもたち。

風呂上がりは工業用扇風機から強風のプレゼント。

忘れられた懸垂棒。

脱衣所に置かれていた「来年70万人割れ」が見出しの徳島新聞

消防団員募集、遺品整理、資源物回収の貼り紙。

「池田高校野球部専用」と書かれた棚には、野球部員のお風呂道具がぎっしりと。

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見たか、これが多様性だ!と言いたくなった。

本当の多様性は東京になどない。

徳島の山の中の小さな小さな街にあるのだった。

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サウナの中で先客の白髪紳士が突然、室温計を殴った。

「すまんね、これいつも、具合悪いもんでね」

その後、80℃あたりを指していた針は、90℃を超えてまだ上がっていった。

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山間の町の子どもたちに、一度でいいから大海(甲子園)を見せてやりたかったんじゃ。

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負けることが不名誉だとは全然思っとらん。負けることで人間が駄目になるなら、そのほうがかえって不名誉じゃと考えておる。成功ちゅうのは失敗した者が到達できる特権じゃ。

(いずれも池田高校野球部・蔦文也監督)

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阿波池田駅のコンビニのお姉さんに「蔦監督のお宅はどちらですか?」と尋ねたら、「アーケードの下を歩いて、突き当たったら右斜め前に進んでください」と、ニコニコしながら教えてくれた。

 

池田温泉

https://public-ikedaonsenn.business.site