これまでに見たことがなかった、アイボリーカラーに「タマゴシャンプー」の文字が入った洗面器。
ハードロックなラジオが流れる、脱衣所にあるサウナ。
斜に構えて立っているサウナストーブ。
水風呂は浴室の一番奥。
浴室の壁にはマンボー、エイ、筋トレをするゾウなどポップなイラスト。
彫り物入りのお父さんに引率された3人の子どもたち。
風呂上がりは工業用扇風機から強風のプレゼント。
忘れられた懸垂棒。
脱衣所に置かれていた「来年70万人割れ」が見出しの徳島新聞。
消防団員募集、遺品整理、資源物回収の貼り紙。
「池田高校野球部専用」と書かれた棚には、野球部員のお風呂道具がぎっしりと。
見たか、これが多様性だ!と言いたくなった。
本当の多様性は東京になどない。
徳島の山の中の小さな小さな街にあるのだった。
サウナの中で先客の白髪紳士が突然、室温計を殴った。
「すまんね、これいつも、具合悪いもんでね」
その後、80℃あたりを指していた針は、90℃を超えてまだ上がっていった。
山間の町の子どもたちに、一度でいいから大海(甲子園)を見せてやりたかったんじゃ。
負けることが不名誉だとは全然思っとらん。負けることで人間が駄目になるなら、そのほうがかえって不名誉じゃと考えておる。成功ちゅうのは失敗した者が到達できる特権じゃ。
阿波池田駅のコンビニのお姉さんに「蔦監督のお宅はどちらですか?」と尋ねたら、「アーケードの下を歩いて、突き当たったら右斜め前に進んでください」と、ニコニコしながら教えてくれた。
【池田温泉】