千葉ロッテマリーンズの前身の前身の前身くらいだろうか。
「ミサイル打線」の大毎オリオンズで中軸を打っていた榎本喜八。
神様仏様の稲尾和久は彼を抑えるためにフォークボールを覚え、彼に対してだけ投じた。
偏屈者の野村克也でさえ「あんなに恐ろしいバッターは見たことがない」と今も昔も同じように語る。
しかし彼の現役時代、特に晩年は奇行が目立ち苦しんでいるように見えたという。
通算2314本の安打を放っているが、名球会には入っていないところにも落合博満とは別種の何かが表れている。
変人として、時に嘲笑の対象として語り継がれていることに、現役時代の彼を知る人は憤っていた。
貧しい家庭で育った彼は家族を養うために現実と戦い、思うように上がらない年俸や肉体の衰えに怒りや焦りや不安や悔しさを感じる、そしてそんな感情を時に抑えられなくなる、本当は一人の父親に過ぎなかった。
新宿の殺し屋と呼ばれた小池重明。
プロになることは叶わなかったが、死の直前まで将棋を打ち続けた「将棋の鬼」。
元来そういった素養を抱えた人間ではあったにせよ、彼が本格的に道を踏み外したのは、生まれたばかりの子どもを失った経験以降のことだった。
何かと抱え込んじゃうのよ、三十代って。
案外しんどいのよ、三十代って。
それでも生きていく、三十代。
今日、38歳になった。
三十代はあと丸2年。