石巻からやってきた。
海岸口にいた猫が「どうせだったら泊っていけよ」と言うもんだから、日立に泊まることにした。
全部、猫のせいだ。
駅前からの風景に、なんだか日立っていうのはちょっとした多摩センターだなと思った。
これで道にしまじろうが立っていたら、もう多摩センターで間違いない。
海岸口の猫が言うものだから、泊まることにしたのがホテル日立プラザ。
シングルルームで確か6000円台、朝食付き。
俺が選ぶくらいのホテルだから、もちろんサウナが付いている。
明らかに後付けの箱で、しかしセルフロウリュができて、基礎には浴室の床のタイルが見えている。
どことなくレオパレスの建築を思い起こさせるサウナだった。
でもね、流れ落ちる水風呂とあわせて、どこかかわいらしいのよ。
全部準備はしてあるから、ほしいものは勝手に持っていけ。
マイペースの行動を好む、サウナ好きに向いたホテルだった。
人工都市(まあ都市は人工なんだけど)、日立の駅前にハッとする灯り。
これは吸い込まれるのが道理だろう。
入ってみれば福乃湯は、俺ではとってもかなわない、湯が熱い銭湯だった。
人はみんな、時代と生まれ合わせた環境の子。
欲求を一気にふたつ満たしてくれたのが、日立駅のすぐ前にある「ラーメン酒場 田島屋」だった。
忘れない。
飛んで翌朝へ。
セルフロウリュのあるホテルの朝食には、セルフ目玉焼きがある。
そういえばウェルカムドリンクも、勝手になんでものドリンクバー(アルコールあり)だった。
一夜明けても、やはりここは多摩センターではないかと思う。
世の中で確かなことは、山本由伸の投げる球が速いことくらい。
日立駅から10分ほど。
ICカードなんてとんでもない!といった風情の茨城交通のバスで、かみね公園へやってきた。
だいぶくたびれてきてはいるけれど、なにかとたくさん揃っているのはさすがは企業城下町の日立市。
旅したことはないけれど、宇部興産の山口県宇部市もこんな雰囲気なんだろうか。
案外と家族で来ると楽しめそうな街だと思った、日立は。
さて、動物園があって、遊園地があって、その他にもいろいろあって、こうなるとサウナもある。
市営の健康施設といった趣のホリゾンかみねへ。
日立市民も異界からの旅人も、区別なく420円で入浴させてくれるから、もう頭を下げるしかない。
浴室からは海と、市民プールが見えた。
サウナはコロナ対策で大げさに仕切りが付けられていて、定員は3人。
もはや個室サウナと変わらない雰囲気だったが、俺は個室サウナに入ったことがない。
「俺はもう70だよ。坂本九が(墜落)事故で亡くなった年からサウナ入ってるんだから。もう40年くらい経つのかね。この歳になるとさ、サウナが少し怖くなってくるのよ
。やっぱり体にキツいとこはあるからね。でもさ、ほとんど毎日入ってきたからさ、止めたら止めたですぐ逝っちゃうんじゃないかとも思ってさ。そうやって毎日入ってんのよ。お兄さんはいくつ?次は晴れた日に来てよ。もっと海がきれいに見える日にさ。茨城の海はいい海だからさ。俺は昔は海で働いてたんだ。今はもうご覧の通り、筋肉も落ちちゃったけどさ。あの頃は船乗ってガンガン働いて稼いでたんだ。『死んだら海に還してくれ』って女房には言ってたんだけどさ、女房のほうが先にいなくなっちまったのさ」
【スパ&ホテル ホテル日立プラザ】
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【ホリゾンかみね】