昼は家族4人でサイゼリヤに行ったのです。
案内された席に座り、7歳の息子はパパの横に、2歳の息子は店員さんに持ってきてもらった子ども椅子でママの横に座りました。
子どもたちは子ども用のメニューを選び、食後のプリンに想いを馳せます。
親は親でこの店の魅力を理解しているので、ハンバーグとドリアを組み合わせてしまいます。
特別なことは何もない、ファミリーレストランのよくある利用です。
すると隣の向かい合って座っていた老夫婦、最近はどのあたりから「老」とつけていいのか難しくなったけど……
おそらく完全白髪の旦那様は後期高齢者ではなかったか。
向かいの奥様はそれより少々若く見えるが、目クソ鼻クソだ。
まず目クソの旦那がこちらを睨みながら言う。
「子ども連れてこんなとこ来んな」
鼻クソ奥様が続ける。
「迷惑だよバカ」
その時点で我らが息子たちはまだ席についてメニューを選んだだけでろくに言葉も発しておらず、少なくとも子どもが騒いでいるなんて表せる状況はどこにもなく。
おそらく目クソも鼻クソも、我々には届かない絶妙の声量で、嫌味なんだかよくわからん呪いの言葉を発しているつもりだったのではないか。
しかし耳の遠くなったご老人の声が本人の想定よりでかいことは必然である。
しばらく睨まれる状態が続き、なにしろ私は心優しい男なので、ニッコリ笑ってある程度耳の遠い方にも通用するボリュームの声で、素朴な疑問をもとに、あくまで彼らの将来を考えた上での親切心で、こう尋ねてみました。
「お◯の準備は済んでいるんですか?」
彼らは揃って、ポカーンと口を開けて斜め上を見上げてしまいました。
考えも覚悟もなくあの手の言葉を吐く人にありがちな、リアクションのとれない姿です。
人は意外なところで意外な相手に言葉を返されるとこうなる、ということはすでに仕事で学んでいました。
そしてそんなことを学ばずに済む仕事に就きたかったとあらためて思いました。
「多磨霊園です」
とでも答えてもらえれば、ああ近所ですよと世間話もできたのにね。
とても残念に思いましたが、ご心配なく彼らは非常に元気で、その後はサイゼリヤおなじみデカンタのワインを白も赤も頼み、終始セックスレスの話題で盛り上がっていました。
そういうのは家でやれバカ。
これまでと変わらず、サイゼリヤは大好きです。
※この日記に書かれていることはだいたいフィクションですが、私が心優しい男なのは本当です。サイゼリヤが好きなのも間違いないです