そりゃ晴れた日なら、歩いていて「靴下の替えを持ってくればよかった」なんて思わずに済んだんだけどさ。
しかし見たことのない景色の見るために八戸までやってきたのだから、地元の人が「八戸はそんなに雪が降る土地じゃないんだけどねぇ」なんて言ってくれる日の景色なんて、最高じゃないですか!
白銀の世界の白銀駅、読みは「しろがねえき」。
この日の八戸線は午後から全面運休になった。
俺は昼の終電で久慈まで抜けた。
ふき、ワカメの茎、昆布、布海苔など、地物だけで構成された手作りランチ。
「大したものがなくて、うちで作ったものしかないけど、ごめんなさいね」
ハンバーグとかカレーとかラーメンとか、そういうわかりやすくない昼食がこんなにおいしいとは、これまで生きてきて知らなかった。
お姉さんが優しく話しかけてくれる食堂の中で、ろくな仕事も勉強もできないままに、ただ息をしてきただけだった44年間を思い知った。
あまりにおかずがおいしくて、ご飯は3杯食べた。
お姉さんは大喜びしてくれた。
「種差まで遊歩道があるの。高山植物も生えているし、鳴き砂もあるのよ。いい季節になったらまたいらっしゃい」
お店に電話が入って、お姉さんは「いいから、いいから、今日は道が危ないでしょ、持っていくから」と言って、あの豊かなランチを出前するために外に出て行った。
こんなに優しくて、温かい大人になりたかった。
鮫駅近くの「まるなか」と書かれた食堂にて。
東京でさ、雪が降るとさ、「あー俺リモートで仕事ができてよかった」みたいなのばっかりでさ。
夜のうちに雪かきをしてくれた人たちに、思いを寄せる者は消えてしまった。
八戸ではどうなんだろう、子どもたちは除雪車に乗ってみたいと思うのだろうか。
もう生きていても嫌な思いばっかりなんだけどさ。
たまに遠くに来るとまた来たいと思うし、もっと遠くに行きたいとも思うし、そのためにはもう少々生きる必要があるわけで、やっぱり旅は自分に必要なのかもね。
あまりにランチがおいしかったので、帰りに普代の海苔を買った。
明日の味噌汁にすればいい。
壽浴場は風呂の種類が豊富で、シャキッとする体感の水風呂がある銭湯だった。
風呂もサウナもいいけれど、印象に残ったのは女将さんが店の前と駐車場を黙々と雪かきしている姿だった。
【壽浴場(サウナイキタイ)】
https://sauna-ikitai.com/saunas/4813
今回は10000円でJR東日本エリアが乗り放題になる切符「キュンパス」を使ったんだけど、こうして東北に来てみると、その駅ごとにも特典が用意されていた。
たくさんポスターも貼ってあるし、3月14日までなんていわないで、もう通年で売っちゃえばいいじゃん。
自分の生まれた国の景色くらい、もっと手軽に見て回れたらいいのに。
以上