人事異動に一喜一憂する大人になんかなりたくなかった。
だってそんなの、典型的なおっさんのイメージじゃん。
しかし俺は、典型的なおっさんになってしまった。
だから今のうちに、年度が替わってわけのわからない生活を強いられる前にと、盛岡までやってきた。
まあ今だって、わけのわからない生活はしているんだけど。
盛岡を訪れるのは7年ぶり。
ゆっこ盛岡は、7年前に来た時はマース盛岡だった。
すっかり綺麗になって、万人向けの温浴施設に変化していたが、原型はやはりマース盛岡だ。
水風呂に足先を突っ込んだ瞬間、かつての記憶がよみがえった。
とろみがある、素材を活かした水風呂。
広い広いサウナ室には目算で108枚のサウナマットが敷かれているように見えたが、実際にはもっと多いらしい。
盛岡には盛岡競馬場がある。
馬場町という地名もある。
ひづめゆも馬の蹄に由来しているのかと思ったら、地名が「日詰」だった。
セルフロウリュができる小洒落たサウナと、深さ140センチの水風呂と。
人の価値は有名無名では測れないけれど、価値が出ると必然的に有名になることは多い。
この日ひづめゆで会ったあの人は、きっと今より有名になって、また違う場所で顔を合わせる気がしている。
新しくなっていた盛岡バスセンター。
こちらは7年前にやってきた時の盛岡バスセンター。
7年前はまだイチローが現役で、メジャー通算3000本安打を達成していた年。
盛岡バスセンターの3階にあるホテルマザリウムに泊まって、同じフロアにあるKANAN SPAでサウナに入る。
どちらももちろん、7年前には存在していなかった。
KANAN SPAは洗濯機が2台並んだような水風呂だった。
サウナ室には白樺の香りがしていて、岩手のサウナ設計士たちはセルフロウリュが好きなんだろうかと思った。
ここはバスセンターの上なのだから、窓を開ければバスが出入りする様子が見える。
7年前とたたずまいが変わっていなかった「カメラのフジタヤ」。
店頭に「写ルンです」がぶら下がっているのも、たぶん同じ。
盛岡はニュースタイムズが選んだ「今年行くべき世界の旅行先」で2位だったんだって。
東北の街は、どうも祭りと温泉だけで語られてしまうことが多い。
俺は岩手県立図書館の余裕がある書架を見て、ここは気持ちのいい生活ができる街だと思った。
見やすさと、本の新陳代謝。
しっかり棚に余裕があるのがいい図書館なんだぜ。
よく覚えておいて。
そして盛岡と水沢を問わず、岩手競馬は3着の選び方が難しい。
かといって総流しではなかなか浮いてこない。
これもまた、覚えておいて。
多少の雨なら降っていたって、むしろ風景の日常感が強くなって、好ましく思える。
近いところでは横須賀、遠いところでは稚内。
そしてこの盛岡にも「この街に育つ人生だったらどうなっていたろう?」と想像したくなる雰囲気があった。
これはもう、雰囲気としか表しようがない。
人間は雰囲気で出来上がっていく生き物だから。
府中にはドン・キホーテの一号店がある。
盛岡にはびっくりドンキーの一号店があった。
府中はドン・キホーテのふるさと。
盛岡はびっくりドンキーのふるさと。
せっかくのびっくりドンキーなのだからパインバーグ!
と思ったら、今は扱いを中止しているとのこと。
メニューには載っていたから、きっと復活するとは思うけれど。
人事異動が発表される前に、祈願の意味も込めて盛南温泉 開運の湯へ。
ここはゆっこ盛岡よりも、さらに素材のまんまの水風呂の感。
無理に冷やすことをせず、とろんとろんで長く入れるタイプだった。
15周年おめでとうございます。
中庭ではかつて、踊りやビアガーデンなどのイベントが開催されていたのだとか。
忘れてしまったコロナ前を思い出していくのは、絶対に面倒な作業ではないよ。
大ケ生(おおがゆう)、開運橋通(かいうんばしどおり)、小鳥沢(ことりざわ)、菜園(さいえん)、肴町(さかなちょう)、前九年(ぜんくねん)、繋(つなぎ)、梨木町(なしのきちょう)、鉈屋町(なたやちょう)、夕顔瀬町(ゆうがおせちょう)…
盛岡は気になる地名がたくさんある街。
住んでいる人は「は?どこが?」って言うんだけど。
盛岡駅から歩いて15分の距離に、ながまち梅の湯。
足を踏み入れた瞬間に、失われたサウナ玉泉の匂いがした。
これはおそらく、サウナ室に持ち込まれた本のインクの匂いなのでは。
このながまち梅の湯の水風呂が、盛岡で一番キンキンしていたのはおもしろかったな。
ただでさえ水圧の弱いシャワーの、湯と水の配合がまったくうまくいかないのもおもしろかった。
で、帰りの新幹線で、徳利とお猪口を持ち込んでいる連中と並びの席になってしまった。
これが東北の思い出になってしまうのはしんどい。
だから仙台で降りてみた。
仙台駅から一番近いサウナ、とぽすへ。
前に来た時は発展途上だった露天のスペースが、完成していた。
今年のオリックスは受けて立つぞ!
なんて強気に言い切れるものでもない。
WBCにたくさん投手を取られているし、吉田正尚はいなくなってしまったし。
そもそも去年の対戦成績は負け越していたのではないか。
楽天さん、どうかほどほどにお願いしますね。
以上