みんな遠くに行ってしまう。ここだけの話だけれど、別に俺は一人が好きなんじゃない。いつも取り残されて一人になってしまっているだけなんだ。
(府中白糸台日記「福永祐一、調教師へ」より)
今年の俺は疲れてしまった、疲れ果ててしまった、売り切れてしまった。
なにも喋りたくないのに、喋らされる機会が多すぎて、しまいには声が出なくなってしまった。
嘘つきのオオカミ少年とは違うけれど、これまで大体「疲れた、疲れた」と言いながら生きてきたせいで、もう俺の「疲れた」を信じてくれる人はもう誰もいない。
そうしたらこれまでで最上級の、酷く疲れた年末がやってきてしまった。
「学び直し」なんて簡単に言うけど、学問だって若くて体力があるうちにやっておいたほうがいいに決まってるだろ。
写真は静岡にある貸切サウナ専門店、泉サウナより。
この日は朝からしきじに行った後、この泉サウナへやってきた。
平日は1人で7000円、2人なら4000円ずつ、3人だと3333円に誰か1円余計に出して、4人で割るときっかり3000円で割り勘の料金設定。
友だちが多いほうが人生は豊かになるよ、俺だってそう思って生きてはきたんだけど。
いいサウナ、いい水風呂、いい外気浴、さらに温かい風呂もあるので冬場でも安心。
ただこの泉サウナのレポートは、もっと感じのいいインフルエンサーにやってもらったほうが店も喜ぶだろうから、このくらいで。
インフルエンサーって、みんな機嫌が悪いよね。
機嫌の悪さがインフルエンサーの必須条件なんだろうか。
なんだか新卒で広告代理店に入った連中が、GWに再会したら同じ話し方になっていたのを思い出す。
「あなたがよく眠れないのは、背中が凝っているせいです」
ひとりでも、グループでも。
そういうことになっているけれど、やっぱりカップルで来るのが一番いいと思う。
少なくとも泉サウナはそういう雰囲気だった。
すぐそこに静岡駅がある街の中なのに、よくぞこんな周りから見えない谷間のような外気浴スペースを造れたものだと思った。
1区分で90分の入浴。
終了15分前になると、『蛍の光』が流れ出す。
ちょっと公共施設の雰囲気があって笑ってしまった。
ひとりだったけど、笑ってしまった。
サウナにひとり、海の幸を食べるのもひとり、静岡でたったひとりの忘年会だった。
声が出ない男には、たったひとりが相応しい。
そして忘れたい記憶の量なら誰にも負けない。