7レース終了後、船橋競馬所属の森泰斗2000勝達成のセレモニー。
本来は「北関競馬」ありきの「南関競馬」であって、森泰斗は北関東に存在した足利競馬の出身。
インタビュアーも原点の足利競馬に触れてくれて、温かいインタビューだった。
森泰斗はいかにもあの辺りで育った人の面構えだなあと思って、いつも応援したくなってしまう。
優しさを前面に出すのが照れ臭かったり、無理して意地を張ってみたり、わざわざ疲れる生き方を選んでみたり。
館林出身、自転車で足利の学習塾に通っていた俺の目にはそう映る。
また来るのは10年後、なんてことはないと思う。
(ともに府中白糸台日記『ハートビートナイターと森泰斗2000勝』より)
もう一度船橋競馬場に来るまでに、10年は待たせなかったけれど、5年8ヶ月もかかってしまったよ。
あれからコロナが流行って、コンビニで袋も出してもらえなくなって、サウナがブームになって、良いことなんてほとんど起こらなかった。
しかし森泰斗は2018年から291勝、355勝、387勝、361勝と順調すぎるくらい順調に勝ち星を重ね、今年も11月までに312勝を挙げている。
確か2000勝セレモニーのインタビューでは「7000勝なんて化け物みたいな人もいますから……」と的場文男さんを話に出しつつニコニコしていたが、おそらく来年の上半期で4000勝は達成するだろう。
森泰斗は河川敷の足利競馬場から巣立った、超一流のジョッキーだ。
競馬場とは、馬と空を見るために来るところ。
師走になれば競馬場にもクリスマスソングが流れる。
船橋競馬場は馬場が白くて、11月末に従来の青森産の砂から宮城産に切り替えたのだという。
大体こういうことが行われると先行馬が有利になるもので、この日も終わってみればその傾向はあった。
終わらないと気づかないのが例によってあれだけど。
競馬新聞は入り口でケイシュウを買った。
赤ペンも買った。
「ほら、当たりそうなペンを選んであげたから、今日は開催の最終日だから、しっかり当てて、また来てね」
と元気なお姉さん。
的中の期待にはまったく応えられなかったけれど、必ずまた来るのは約束する。
少なくとも今度は、5年8ヶ月も待たせないよ。
今年、川崎競馬場に行った時はだいぶ騎手が入れ替わっていて世代交代かと思ったものだけれど、船橋競馬はそこまで変わらないか。
森泰斗はもちろん、澤田龍哉、實川純一、野澤憲彦、濱田達也、山本聡紀あたり。
彼らで当たった馬券の記憶がない、いかにも船橋競馬らしい騎手たちの名前。
京成八幡から都営新宿線の本八幡へ乗り換える間に、この日のサウナは柳湯で。
サウナ室を天井に沿って物干し竿が貫いていた。
普段は洗濯物を干しているんだろうか?
浴室のセンターに熱くもぬるくもない十一角形の薬湯があって、ここで脱力する時間のためにサウナに入っているようなものだった。
本八幡駅前のレインボーは立派な風呂屋でありサウナ屋だが、財布が薄くなった後は少々眩しく見える。
この日の自分にとって、競馬場から地続きの世界は、柳湯の薬湯と演歌が流れるサウナ室にある気がした。
以上。