気づいたら松の湯に来ていたから、俺はサウナのある銭湯に行こうとしていたらしい。
かつては帯状疱疹の夏を送ったこともあった。
夏は好きだけど、疲れる。
今年はどうも忙しく、夏バテをするいとまもない。
「忙しい」は口にすると損をすることが多い言葉なので、なるべく避けて生きてきたけれど、結局それが状況をこんな風にしてしまった。
松の湯は水風呂の爽快感が帰り道まで続く銭湯だった。
仕事、研究、家族、たまに競馬。
苦手なことばかりやっていたら、得意だったことを忘れてしまった。
「流れに身を任せて生きてきただけです」なんて言い切れるのは、相当な実力と才能に恵まれた人に違いない。