この日は関東の電力がひっ迫するといわれていたから、中部電力の世界まで疎開した。
電気が足りない、そして子どもを大事にできない国は、滅んでいくに違いない。
だって発展のしようがないじゃんか。
病んだ豊橋駅西口を、病んだ俺が歩く。
世の中はいつかは滅ぶのだから、「滅ぶ滅ぶ」と言ってりゃ嘘つきにはならないよね。
適当に雨がぱらつく日のほうが、その街の生活感が伝わってくる。
しかしこの日は雨が降りすぎて、なかなかポケットからiPhoneを取り出す気になれなかった。
でも、まあいいや。
魅力のある豊橋は、魅力のある人が発信してくれればいい。
平然と社会人をできてしまうのは、精神に欠落がある証明。
感覚的には静岡駅からサウナしきじまでの徒歩と双璧だ。
この先にサウナピアがあるのかと疑いだすと、電柱に道標を発見する。
これがヘンゼルとグレーテルのパンくずか。
まともに考えればバスの距離だろうと、歩ききってから思う。
自ら「昭和ストロング」をうたっているということは、この看板は令和に作られたもので間違いない。
後ろに工場が入るアングルがこの店らしい。
バイク、自転車、徒歩で来る人は、ニトリを目印にするといいです。
初めての客だとわかると、受付を離れて館内を案内してくれるお姉さん。
「冷たいほうがいいでしょ?」と、大盛りの鉄板ナポリタンスパゲティー(原文ママ)とともにでっかいグラスの氷水を持ってきてくれるお姉さん。
お姉さんが優しいサウナ屋はいいサウナ屋であることは、すでに木更津のつぼやで学習しているので。
江夏の21球の頃の、広島東洋カープのビジターユニフォームに似た色遣いの館内着。
しかしあの貫録で、当時江夏は31歳だったとは。
三連休明けの昼からサウナピアでのんびりしているおじさんたちは、江夏よりもかわいげはある。
鼻の粘膜がヒリヒリするカラカラ設定のサウナに、豊橋まで来てよかったと思った。
最近のトレンドになっている「コンパクトな空間がセルフロウリュの蒸気に満たされて…」とは対極のサウナ室。
パノラマな窓から浴室を広く見渡せるデザインは、ここが名鉄パノラマカーの豊橋だからだろうか。
そういえばサウナジャンボもこんな造りだったし、この後寄ったサウナオーギもまたそうだった。
広い水風呂の隣にはさらに広い超音波バイブラ槽があって、いわゆる「冷やし湯」として体温に近い設定になっている。
外気浴は芝生の庭。
豊橋の人はわざわざ東京のサウナに行きたい!と思うことなどあるのだろうか?
かつてはそれぞれの街に、それぞれの人たちを癒すサウナ屋がたくさんあったのだろう。
環境問題への意識が高まる時代に、人口が減り国土は自然に還っていく。
人々が疲れ切っている時代に、癒しの場は減っていく。
根が真面目な人間なもので。
毎日がんばって働いて、帰ってきたらがんばって寝るだけの毎日になるはずだった。
サウナが趣味になったおかげで、いろんな場所に行って、いろんな人に会うようになった。
うまくわき道に逸らせてくれて、サウナが人生を豊かにしてくれたと思っている。
3番の項目の選択肢「F・昔からきまっとる」がいい。
館内着は広島東洋カープで、この選択肢には「お前に言われんでもわかっとる」の前田智徳の雰囲気がある。
ここは愛知で、もちろん中日ドラゴンズのお膝元で間違いないのだけれど。
【サウナピア】