なにもない一日はロスコで過ごす

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「なにもない一日はロスコで過ごす」という契約を自分と取り交わした。

特に履行の義務も違約金の定めもなく、そもそも契約書は自分の脳内にしかない。

しかし甲も乙も俺なのだから、それで立派に契約成立だ。

俺は誰の監査を受けるつもりもない。

今日は午後から1800円でのんびりコース、サウナは長い休憩を挟んで5セットほど。

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7時間も8時間もロスコで過ごすと、知り合いの1人や2人や3人と出会うものだ。

そしてそこで新たにリニューアルしたサウナ屋の情報を仕入れたりする。

群馬から山梨経由で東京に住んで、ぼちぼち丸20年。

一代限りでは放蕩者と言われても言い訳のしようがなく、事実上は銀行の持ち物であるマンション程度しか手に入れておらず、実質的な東京の人間としての生活は息子の代から手にするものだと思っている。

が、駒込のサウナで俺をめがけて声を掛けてもらったりすると、少しは東京に足跡を残せたのかと思ったりもする。

ある夜 一時頃に目がさめて どうしても眠られない 天井や壁を見ていたが ふと前日に買ったおとぎばなしの本が二階にほってあることを思い出した 取りに行こうとして扉をあけると 入れ代りに スーッと黒い三角形をした半透明のものがはいってきた ギョッとしたが廊下にとび出すなり扉に鍵をかけた 庭へ下りて外から窓をソーっとあけて のぞいてみた 何者もいない 窓から部屋へはいってみると たいへんにいいシガーの香りがほんの微かに残っているだけであった

稲垣足穂一千一秒物語』より)