片手の握手と両手の握手

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以前に、静岡の某有名サウナ施設から海寄りに歩いた方向にある某石商店で、憧れの元プロ野球選手と飲ませてもらったことがあった。

近鉄サイパンキャンプの話、辻や白井とのゴールデングラブ賞争いの話、オールスターで江川卓の9連続奪三振を阻止した時の話……。

今の巨人の原辰徳監督を見ると、スポーツ選手上がりというより大企業の管理職の風格があるけれど、この憧れの元プロ野球選手さんにも監督をしていた時期があって、やはりそんな雰囲気があった。

気さくで、がっしりした、出来る男。

その中で出てきたのが「もう会わない、もう会えないと思った人とは両手で握手するんだぞ」という教えだった。

ちなみにこの日の元プロ野球選手さんとは、散々飲んだ後に軽く片手でタッチのような握手をしてもらった。

後日「六本木で飲むぞ」と電話をもらって、一体どんな格好でどれだけお金を持っていけばいいのか焦ったけれど、もう一度会うことができたのは、あの時に両手で握手をしなかったおかげだと思った。

 

憧れの人の教えだもの。

以降の俺はそれを忠実に守った。

誰とでも再会を誓って両手で握手はしない、というのは優等生の生き方だけれど、それでは教えを守ったことにはならないと思った。

また会う人とは片手で握手。

もう会えない人とは両手で握手。

やっぱり仲良くなっても、仕事関連の人とは再会できないもの。

両手で握手して、その後また会えた人はいないから、俺にもある種の見る目はあった。

片手で握手して、再会できていない人はいるけれど、それはこれからなのだろう。

 

で、やっと写真の都留市にある中華料理「松鶴」の話。

ここは18歳から通っていて、そりゃ社会人になって相当に頻度は減ったけれど(そもそも引っ越しちゃったしさ)、機会があれば通い続けているといえる店。

食べ続けた期間を考えれば、ここのホイコーロー定食が自分にとってのおふくろの味になっているといえるし、当初は600円だったものが今は780円になっている点に、24年間の物価と税の変化を見ることもできる。

ずっと頑張っている厨房のお母さんとは、行くたびに挨拶して片手でがっしりと握手をしていた。

「また来なよ」「また来ます」の言葉以外の部分は、全部握手に含めていた。

かなり久しぶりの今日は、さすがにまだそこまではということで、面倒な世の中になっちゃったねと言って、手を振って別れたのだけれど。

 

コロナ禍になってから、誰とも握手ができない社会になった。

でもだからこそ、両手で握手した相手もいない。

この前まで鶴見で一緒に働いていた仲間たちとも、当然握手をしていないから、またどこかで再会するのだと思っている(もうあの仕事は嫌だけど)。

出会いは減ったけれど、別れてもいない。

コロナ禍で失ったものを振り返ろうとしたら、あれ、案外失ってなくない?なんてこともあるんじゃないかと思っている。

特に人間関係。

緊急事態宣言が明けて、これから世の中は明るくなっていくと信じている。

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で、ここまで真面目に書いたんだけど、これまで松鶴で何百やもしかして千のホイコーロー定食を食べておきながら、ピーマンは残したことしかありません……苦手なので。

厨房も忙しい店なので、毎度区別して作るのも難しいそうな。

俺はきっとSDGsの敵。