露天に出ると、どうしてここまでと思うくらい毛足が長くて、やたらと硬い人工芝が敷かれていた。
この人工芝の上で野球をしたら、速い打球がまったく止まらないので、内野手は苦労するだろう。
しかし実際はこの人工芝の上にボールではなく爺様が転がっていた。
俺も真似して転がったら、背中に人工芝の痕がついてしまった。
ああ素晴らしき外気浴!
館内には島津悦子という着物の女性歌手の写真がたくさん貼られている。
サウナの中では歌まで流れている。
金沢駅から車で約20分の秘境にあるこの温浴施設には、どうもわけのわからない点がたくさんあるのだが、400円で利用できるので、誰も余計な疑問は持たないことにしているようだ。
温泉もやたらと熱い。
あえてこの温浴施設の名を記すことはしないが、アドレスだけは置いておく。
島津悦子さんはかなり下のほうに唐突に登場している。
https://www.yuraku-onsen.jp/yuraku.html
振り返れば、ビルの谷間の銭湯サウナばかりを探し続けてきた。
固執してきた。
サウナと水風呂の小さな温度差に一喜一憂してきた。
それが東京の暮らしだった。
秋の訪れを告げるトンボがクルクルと飛びまわり、チマチマと生きてきた俺を嘲笑っていた。