コロナの前の稲荷湯

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コロナの前の頃、特に八王子の稲荷湯のサウナ室では、いろんな話が遠慮なく聞こえてきた。

(実は今もそれほど……かもしれないけど)

商売の話、病気の話、目の前のテレビで流れている大相撲の話、たまに政治の話。

どんな話をしていても彼らは元気で、いつも「それじゃ、また明日」で終わっていく。

ロックアイスを分けてくれるおじさんもいたし、そのおじさんが一人だったのか日替わりだったのかも今は定かではないけれど、気持ちのいい居場所には違いなかった。

振り返れば、コロナの前の世の中はおもしろかったんだな。

彼らはみんな大きな子どもだった。

ここのサウナ室はそういう場所なのだと思っていた。

ぼくがこの小惑星についてこんなに細かなことを言ったり、番号を教えたりするのは、それは大人のせいだ。大人は数字が好きだ。新しい友だちができたよと言っても、大人は大事なことは何も聞かない。「どんな声の子?」とか、「どんな遊びが好き?」とか、「チョウチョを収集する子?」などとは聞かない。聞くのは「その子はいくつ?」とか、「兄弟は何人」とか、「体重は?」とか、「お父さんの収入は?」などということばかりだ。

サンテグジュペリ星の王子さま』より)

今日のサウナは稲荷湯、遠赤外線ストーブの1階でした。