呪いとホームドア

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京王線の乗り換え駅で、嫌いな女を見つけてしまった。

 

以前とは違って、女は少々腰が曲がった立ち姿に見えた。

整体が狂ったというか、肩から上のバランスもおかしくなっていた。

確かに俺より歳は上だったが、あからさまに老化するにはいくらなんでも早い。

今日の様子では、蹴っ飛ばしたらあっさりと倒れてしまうに違いない。

しかしそれだけでは、俺が通報されて、捕まって、終わって、になるだけの話だ。

ひょっとして、今日が娑婆での最後の日になるとすれば、一撃で決めなければならない。

 

せっかくここは駅なのだから、俺と女と線路との間合いをはかろうとしたが、そこはもうホームドアでガッチリとガードされている時代。

安全対策にホームドア、これは確かに有効なのであった。

 

どれだけ呪っても届かない。

と書こうと思ったが、あの腰の具合は俺の呪いが効いた結果なのかもしれない。

俺は毎日うんざりしているけれど、それはそれで自分自身になにがしかの呪いをかけているのかもしれない。

何を言っているのかわからなくなってきたところで、殺されるくらいなら自分でやったほうがいいんじゃないかということだ。

 

以上