例によって土曜だが働いていた。
例によって遅い休憩時間にカレー屋に入った。
よくあるタイプのインドカレーだが、例によってスリランカ人が仕切っている店だ。
例によって「日替わりカレー」がメニューの一番目立つ位置にあって、今日はグリーンカレーだったかキーマカレーだったか。
例によってサラダと飲み物がセットになって、別々に頼むよりはお得というやつだ。
俺は「どうせ日替わりカレーだろ」の雰囲気を、例によって無視して、マトンカレーをターメリックライスで注文した。
どうでもいい場面でこそ、人の思惑に沿って動くのが嫌なのだ。
そしてそうなってしまった自分が大嫌いなのだった。
マトンカレーを食べ終えると、店内には誰もいなかった。
お客もスタッフもいなかった。
これはチャンスだと思い、会計をせずに店を出てしまうようなことはなく、ぼちぼちとネットなどしながら誰かがやってくるのを待っていて、オリックスが西武にリードしているのを知った。
東京の新型コロナ感染者が420人だったことを知った。
サウナランドフェスなるイベントが開催されているのを知った。
すると店内に、歳の頃は俺の母親と変わらないであろう女性の3人組が、新型コロナなどどこ吹く風の体で入ってきた。
社会が壊れていく中で、それでも生き残っていくのはこの人たちだろうと、そう思わせる貫禄があった。
まもなく俺に向かって「日替わりカレー、あなたに頼めばいいの?」と訊ねてきた。