巣鴨でサウナに入りたかったら、駅前のサンフラワーに入っておけば間違いない。
それはわかっている。
わかってはいるんだ。
店としてはお客に来てほしい、お金を使ってほしい。
それでも店の前に掲げざるを得ない「Stay Home おうちですごそう」。
矛盾した世界に生きていると心が狂うよ。
もう俺もだいぶ狂ってきているので……。
振り込め詐欺も、いつまで経ってもなくならない。
それどころか、高齢者から若年層への資産移動の一形態として、定着してしまった感すらある。
巣鴨で1番は、世界で何番目?
人出は多いといえば多いのだろう。
ただこんなもんか、といえばそのくらいだった。
そして忘れてはならないのは、自分もその人出の中の一員であるということだ。
宮下橋の近くに、今回の目的地である宮下湯がある。
水風呂横の説明書きにそう載っていた。
ただしここに住んだのは大政奉還の遥か後で、明治末期のことだったらしい。
入口から地下へ降りて、その先に宮下湯。
失礼ながら北朝鮮にあるという「地下キャバクラ」の話を思い出した。
社会主義国家に隠れ銭湯を造るとするならば、きっとこんなデザインになるだろう。
ところで日本は資本主義国家だよね?
木曜定休で今は午後3時から0時までの営業、サウナ利用は670円で大小タオル付き。
浴室にはシャンプーもボディソープもある。
ここは井戸水掛け流しの水風呂が素晴らしいとの評判があって、もちろんそれをあてにしてやって来たのだが、入ってみたら実際その通り。
太い蛇口からジョバジョバ水が流れ続けていて、おそらくは18℃とまずまず冷えているのに体が出ようとしてくれない。
ぼちぼち出ようと意を決して立ち上がったものの、本能に負けてもう一度水風呂に沈み込んでしまう。
この感覚は高知で入ったステンレス水風呂の高砂湯以来。
バイブラが効いているせいか、水の体感が柔らかい。
このあたりは同じ太い蛇口からジョバジョバ系でも、質実剛健な府中のあけぼの湯とはまったく異なる。
何がこの差を生み出しているかについては、物理や化学に詳しい人に訊いてほしい。
純文系の「軟水だから」の一言で終わりにするのはもったいない。
ガス遠赤外線ストーブのサウナも100℃超で、この銭湯サウナとしては立派な熱さも、体が長く水風呂を欲した要因であったといえる。
席には薄くて長いタオルが敷かれているだけだったので、青くて大きい貸しタオルを腰から巻いて入った。
他の人はまちまちだった。
「5時で閉店なんですが、大丈夫ですか?」と言いながら、お姉さんが席に案内してくれたのは3時半で、そうだよな、喫茶店ってのはそのくらいゆったりした感覚で過ごす場所だよなと思った。
【宮下湯】