「きたへふ」の214勝目

広島の元エースで通算213勝の北別府学氏(62=野球解説者)が20日、2年前に成人T細胞白血病と診断され、明日21日から広島県内の病院に入院すると、所属事務所を通じて公表した。

月に1度の定期検診で経過観察をしてきたが、昨年11月から数値が上昇してきたため、医師と相談の上で入院を決めた。今後の治療は、化学療法を行った後、骨髄移植を行う予定。

北別府氏は都城農から75年ドラフト1位で広島に入団。80年代の広島を代表するエースとして通算515試合に登板し、213勝141敗、5セーブを挙げている。抜群の制球力で知られ、歴代23位の通算3113回を投げていながら、与四球はわずか656。9回平均で平均1・90個と精密な投球ぶりだった。 (日刊スポーツ)

ファミスタでCチーム(というか思いっきりカープ)のエースは「きたへふ」だった。

スピードはないが、右に左にグニャグニャ曲がる変化球。

実際、北別府学は横の変化で勝負する投手だった。

長身の投手が短いステップで重力を生かして投げ下ろす、現代的な投手像とはまったく異なる在り方。

前世紀の野球といえばまさにそうで、手の長い打者が踏み込んで打ちにくる現代野球では、北別府のようなエースは存在し得なくなってしまったように思う。

東尾修もしかり、だ。

後は斉藤明夫加藤初尾花高夫、それに大洋に戻ってからの新浦寿夫も素晴らしかったな。

なんというか、山本昌とは違うんだよ。

かつてのスピードを失っても、経験から培った技術で勝負し続けたベテラン投手たち。

「この人が担任だったら学校行かないな」と小学生の俺に思わせるような、怖い顔で意地を張って投げ続けた思い出の投手たち。

野球がSBOだった時代。

言い切るが、あれはいい時代だった。

 

話が逸れた。

俺がしようと思っていたのは北別府の話だ。

成人T細胞白血病、覚えがある。

ごく近しいところでこの病名に接したことがある。

治癒は可能だが、その道のりは……

この病に軽度や重度の概念があるのかも俺はわからない。

ただ、このニュースを見た瞬間ぞっとした。

ひとつのしんどい思い出がよみがえった。

 

巨人に勝っても仏頂面で「今日は球審がキツかったので……」と答えたヒーローインタビューを覚えている。

次の日、学校で話題になったからだ。

難なく克服して「大した病気じゃなかったですね」くらい言ってくれ。

広島一筋で213勝141敗。

「きたへふ」が無事、214個目の勝ち星を手に入れることを祈る。