初めての子が産まれる時、育児休暇は取れなかった。
思いの外、女性社員からの抵抗が大きくてうんざりした。
この人たちは自分の夫にも「子育てなんて女がやるもの」と言ったのだろうか?
「男の子育てなんて迷惑」と怒鳴ったりしたのだろうか?
そんな反応はさておいて、それでも育児休暇を取得したくて頑張ってみたのだが、無駄だった。
子どもの誕生を前に、職を失うわけにはいかなかったからだ。
その時の子が4歳になった頃、俺は職場を変わっていた。
キュレーションサイトを立ち上げ、手段を選ばず拡大し、プロ野球チームを持つ大手企業に売却し、自分もそこの役員に収まる…という村田マリ的な展開ではなく、一介の社員としてではあるが、かつてのうんざりする職場からは脱していた。
3月に第2子が誕生する。
上司は自ら育児休暇の取得を打診してきた。
「共働きだろ?今の時代、男も子育てなんて当たり前だろ」
「2人目が産まれると、上の子は寂しがるんだよ。一緒にいてやったほうがいい」
「こういう時にポイント稼いでおけば、奥さんもなんとか…」
喜んで、育児休暇を取らせていただきます。
上司はかつて仕事人間で、いつの間にか子どもが成長していたことに悔いを残しているらしい。
自分のような悔いを部下には持って欲しくないと。
つくづくありがたい、仕事そのものはつまらんのだけど。
期間は1ヶ月。
今は春が来るのを待つ。