とにかくでかいんだ、ニュー椿ってやつは。
建物、存在感、いやまあ、率直に言って「ニュー椿」と壁面に描かれている文字がでかい。
ここまででかく書かないと、豊島区民は気づいてくれないのだろうか?
それともこれはとにかく私のことを忘れないでという、寂しがり屋の椿さんの念を表したらこうなったのだろうか?
今日はじめてのニュー椿。
でかい文字は、近くで見たらドット調で描かれていた。
俺は昭和の小学生だったものだから、ファミコンの「デザエモン」を思い出してしまった。
腕に巻くには論外で、首にかけるとどうにも短い。
しかしこの中途半端な長さの紐で括られた黄色のサウナキーがここでは主役で、夢の扉を開いてくれるのだ。
これはよくある、サウナ室の入口を引っ掛けて開けるための鍵だと思っていたが、違った。
これはサウナコーナーへの扉を開いてくれる鍵だった。
「サウナコーナー」、この響きだけで興奮してしまう。
名古屋のサウナジャンボにあった「サウナビュッフェ」並みに興奮してしまう。
それぞれではありふれているのに、組み合わせとしては稀代な複合語を見ると、異界感を覚える。
ニュー椿はこんなにでかいがあくまで銭湯であって、470円で入浴できる。
しかし俺はサウナコーナーの利用者なので、黄色い鍵を受け取るために1200円を支払っている。
この金額差もまた異界だ。
今日は2階か3階か、それはニュー椿ユーザーにとっては、天気予報や予告先発より重要な情報なのだという。
人気なのはロッキーサウナのある3階らしく、今日は男湯が3階にあてられる日であることを下調べしてやってきた。
浴場の入口では「今日は偶数のシだから男湯がこっちのシだ」と元気のいいお客さんが話していた。
「日」を「シ」と発音していたから、生粋の江戸っ子なのだろう。
そのサウナコーナーは、とにかく広かった。
やはりなんでもニュー椿はでかいということだ。
ロッキーサウナは常にジュージュー音がするからどういうことかと思ったら、オートロウリュが3分に一度も行われていた。
結構な水量が流れ落ちっ放しの水風呂は、十一角形でバイブラ派も羽衣派も共存できるビッグサイズだった。
背中に墨の入った客人も何人かいて、皆マイルドで中央に塩が置かれたハーブサウナに集まっているから面白いものだと思ったが、これはハーブサウナの室内にテレビが置かれているせいであろう。
時間からして、おそらく山口達也さんのニュースが流れている頃だった。
大塚までは大した距離ではないので、帰り道は都電の線路脇を歩いた。
すると明らかに銭湯のものである煙突を見つけた。
近寄ってみると、廃銭湯なのであった。
やはり行きたい場所にはさっさと行っておかねばならない。
今回のニュー椿もいい銭湯サウナだとは聞いていて、ある意味ここまで楽しみに温存してきたつもりだったのだが、あらゆるものに悠長な考え方は通用しない時代であることを認識しなければ。
最近は生きていて、切羽詰まった思いになることが多すぎる。
この銀泉湯は7月に閉店との貼り紙があったので、例によってコロナ禍のせいかと思ったのだが、どうもこれは2年前の7月のことだったらしい。
【やすらぎの湯 ニュー椿】