ピンサロの街、大塚。
しかし濃厚接触が悪とされる世の中では、客引きにも元気がない。
一方そういうものをなくしてしまうために、今がチャンスと思っている人間もいるのだろう。
胸くそ悪い。
ボクシングの街、大塚。
目に見える敵と見えない敵。
どっちも相手にしなきゃならんのだから、ボクサーにとってもしんどい時代だ。
おにぎりの街、大塚。
突如インバウンドの概念が消滅した中でも健闘している「ぼんご」、この街では時としてサウナ代よりおにぎり代のほうが高くつく。
だって筋子、うめえんだもん。
中山では強いが、東京ではなぜか走らないリクシバ。野平祐の乗らないフイニイでは心細い。
「しかし、今年はバカについている吉永のカミタカがいる」と私はいった。
それにオウジャだってもはや一流馬だよ。ミスカゲヨシだっていい。なんでもいい。とにかくアカネテンリュウを負かす馬のファンになってやる。
オレは本命は負ける乱世の時代じゃなきゃ面白くないんだ。世の中が変わってくれるんじゃないと、賭けてみる気になりゃしないよ。
(寺山修司『競馬場で逢おう』より)
最近人気のカプセルイン大塚。
ここのサウナと水風呂を好む人たちにはさ、どこかさ、大きな流れに抗いたい意地を感じるんだ。
そうじゃない人はごめんな、ここでは君たちの話はしていない。
この店はピカピカじゃないし、キラキラもしていない。
『サ道』の第何シリーズまでやったって、ナカタアツロウがここの軽くRが付いたサウナに入るシーンは出てこないだろう。
一言で表せば玄人好みだが、表してみたところで何かが理解されるわけではない。
それでも、だからこそ、ここに賭けたい人がいるんじゃないか。
俺はカプセルイン大塚の単勝を買う。
これが当たればまさに乱世で革命だ。
ただしメシを食わなきゃ腹が減るので、かるまるとの馬連もしっかり押さえておく。