心を壊す

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22歳で就職した頃、世の中にはなんとおかしい人間がいるもんだと思った。

彼は新入社員を並べ、それぞれの出身地を尋ね、初めてのゴールデンウイークには必ず帰省して先輩に恵まれた職場であると親に向かって10回説明することをノルマとし、自分好みの土産を買ってきた社員を一番の贔屓にすると宣言した。

その後経理で「何か」をやらかして、子持ちの身で送別会のない退職をして消えた。

 

22歳で就職した頃、世の中にはなんと狂った人間がいるもんだと思った。

彼女は若手社員を個室に呼び出し、3時間の説教で生まれも育ちも否定し、涙を流す若手社員を見ながら「一度こういうことがしてみたかったんだ」と満面の笑みで定時に帰っていった。

その後「何か」の疾患で突然出勤しなくなり、そのまま消えた。

 

22歳で就職した頃、世の中にはなんと無責任な人間がいるもんだと思った。

天下りの彼は初見の挨拶で「自分の身は自分で守れ」と得意げに語り「じゃあ、あなたの仕事は何なんですか」と突っ込まれたら急に怯え始めた。

その後あっという間に死んだ。

半年も持たなかったように記憶しているが、どうでもいいことなので曖昧だ。

ちなみに突っ込んだのは、唯一と言っていい我が師と呼べる存在。

 

34歳で退職を決めた頃、結局世の中は結局図々しく生きられる人間が一番強い、と思った。

彼女は家庭第一を宣言しつつ、女性社員には家庭のための特段の配慮をしながら、男の俺には子どもが熱を出したと保育園から電話が入っただけで「不真面目だ。今すぐ退職しろ。自分の意思で」と怒鳴りつけてきた。

その後は関わりたくもないのでこれは風の噂だが、彼女は離婚し、親権は父親へ。

 

振り返ると各人にそうなるべきオチがついていて、ある意味世の中は正義で機能しているのかもしれないと思った。

今になると彼ら、彼女らは根っから○○というより、何かのきっかけで心を壊されながらも、壊される前の世界で生き続けることを余儀なくされていた存在だったのだろう。

俺と同世代の中にも、疲れ果て、壊れてしまった仲間が結構出てきたから、壊れるプロセスまで含めて想像はできる。

そして他人事のように書いているが、もちろん自分だって予備軍には違いない。

片足だって認めたくはないけれど、片方の足首くらいまでは突っ込んでいるかもしれない。

 

それでも上に書いた連中、どんな事情があったって誰ひとり許してないんだけどさ。