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最強馬コディーノ

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2012年の11月、東京競馬場
その日は土曜日で、時折小雨が降っていたように思う。
天気が悪いから初冬の日の入りは早く、メインレースの東スポ杯2歳ステークスが終わった頃にはもう暗く、逆に照明が眩しかった。
勝ったのはコディーノ
デビューから3連勝のゴール。
白い馬体、いとも簡単に他馬を差し切る末脚。
一頭、違う生き物が走っているように見えた。
あの日。

ゴールしても、歓声は湧かなかった。
全くなかった、ということもないのだろうが、俺が競馬記者なら「見事な末脚で3連勝を飾ったコディーノに歓声が湧いた」というような原稿は書けない。
いや、盛り上がらないのも不自然だろ、仕事だと割り切ってそう書いてしまうかもしれない。
俺のような面倒くさがりな男は。
しかしそれでも、心中に偽りを書いた罪悪感は残ったと思う。
2012年の東京スポ杯2歳Sをコディーノが勝った瞬間、スタンドは盛り上がらなかった。
皆で驚きを含んだため息をつくような、逆らえないものが現れたと感じた時の畏敬、畏怖の念と言おうか。
強さに驚く程度にしか、この馬のことを知らなかった未熟感。
コディーノの強さに圧倒されたおっさんがたくさんいたあの日の東京競馬場
「ほぉ〜」と「おお〜」の真ん中のような低い声に囲まれて、本当に強い馬が勝つとこんな雰囲気になるんだと初めて知った。

その後コディーノはひとつも勝てず、死んだ。

明日のオークスにはコディーノの全妹のチェッキーノが出走する。
一度は最強馬と見込んだ馬の妹にしては名前が軽い印象だが、これにはこれで「射撃の達人」なる意味があるらしい。